「戦後80年 石井柏亭 えがくよろこび」(松本市美術館)開催レポート。信州美術の発展に尽くしたひとりの画家の画業に迫る【3/4ページ】

草間彌生の代表作や初期作品が楽しめる特集展示

 また同館では、草間彌生による「草間彌生 魂のおきどころ」も通期展示として開催されている。世界を舞台に活躍する草間は松本市で誕生した。同館では、2002年の開館時から、草間の作品を数多く所蔵しており、世界的にも屈指の草間の常設作品展示を展開している。21年に行われた大規模改修工事を経てから本展の開催は続いており、年に4回展示替えが行われる。

 本展では、草間の多様な作品をめぐるように鑑賞することが可能だ。会場入ってすぐのところに展覧されるのは《チューリップに愛を込めて》。美術館の入り口に立つ高さ10メートルを超える巨大なパブリック彫刻《幻の華》を感じさせるインパクトのある作品だ。

展示風景より、《チューリップに愛をこめて》(2023)All Images © YAYOI KUSAMA ※画像転載不可

 その後、展示室を囲む鏡張りの壁に無数のシャンデリアが映り込む《傷みのシャンデリア》や、草間の代表的な「インフィニティ・ミラールーム」シリーズの《魂の灯》が続き、草間ワールドに迷い込んだようにも感じられるインスタレーションが展開される。暗い部屋のなかに現れる《天国への梯子》を覗き込めば、館内のどこにいるのかわからなくなりそうな無限の空間を感じることができるだろう。また同タイプの黄色いかぼちゃの彫刻のなかでは最大のサイズを誇る《大いなる巨大な南瓜》も紹介されており、草間ならではの独創的な世界観が立ち現れる。

展示風景より、《傷みのシャンデリア》(2011)
展示風景より、《魂の灯》(2008)
展示風景より、《天国への梯子》(2012)
展示風景より、《大いなる巨大な南瓜》(2017)

編集部