「戦後80年 石井柏亭 えがくよろこび」(松本市美術館)開催レポート。信州美術の発展に尽くしたひとりの画家の画業に迫る【4/4ページ】

 なお現在、愛知県名古屋市にある松坂屋美術館では、「松本市美術館所蔵 草間彌生 版画の世界―反復と増殖―」も開催中。同展は、草間の版画世界に焦点を当てたものだ。1970年代後半から積極的に取り組み続けてきた版画制作は、現在の評価につながる大きな原動力となっている。

 同展では、南瓜やドレス、帽子などのモチーフが多く登場する初期作品から、近年の木版画による富士山の連作、モノクロームの大型シルクスクリーン作品「愛はとこしえ」シリーズまでが紹介されている。松本市美術館が所蔵する作品に作家蔵を加えた約160点で草間彌生の版画芸術の軌跡をたどるものとなっている。

「草間彌生 版画の世界―反復と増殖―」(京都市京セラ美術館)第3章「愛すべき南瓜たち」の展示風景より © YAYOI KUSAMA
「草間彌生 版画の世界―反復と増殖―」(京都市京セラ美術館)第1章「わたしのお気に入り」の展示風景より、「富士山」の木版画

 晩年浅間温泉を拠点に活躍した画家・石井柏亭の画業をたどる「戦後80年 石井柏亭 えがくよろこび」、松本市で誕生し、いまなお世界で活躍を続ける草間彌生による「草間彌生 魂のおきどころ」。同館で開催中のこの2展示に加え、松坂屋美術館で開催されている「草間彌生 版画の世界―反復と増殖―」を通して、松本という土地に深く関係のある2名の巨匠の画業に、思いを巡らせてみてはいかがだろうか。

編集部