スイス現代美術を代表する映像インスタレーション作家、イヴ・ネッツハマー(1970〜)。その日本初個展が栃木・宇都宮の宇都宮美術館で開催される。会期は3月10日〜5月12日。
ネッツハマーは1970年、スイス・シャフハウゼン生まれ。建築製図やデザインを学んだのち1997年より作家活動を開始。ピピロッティ・リスト(1962〜)の次の世代を担う映像インスタレーション作家として注目を集め、2007年のヴェネツィア・ビエンナーレではスイス館代表をつとめた。これまで、サンフランシスコ近代美術館(2008)、ベルン美術館(2010-11)など、各地で個展を開催。大学や病院など、公共建築と一体化したプロジェクトも多く手がけている。また、 今年は長編デジタル・アニメーション映画『旅する影』の公開を予定。
ネッツハマーの表現の起点は、コンピューターによるデジタル・ドローイングの純化された線にある。ドローイングの航跡から生まれた線は、ロープや針金などを用いてさらに現実の三次元空間へと展開される。また、そのデジタル・アニメーションには、顔も性別もさだかでない抽象的な「人像」が繰り返し登場。これらの「人像」はたびたび地下や水中へと潜り、鑑賞者の深層を刺激する。
今回、ネッツハマーは宇都宮の大谷採石場跡や、近隣の足尾銅山跡の地下空間を訪れ触発された新作を制作。とくに大谷採石場跡から受けたイメージは、竹を用いた大規模なインスタレーションとして結実した。
さらに、周囲の森の情景を建物内に取り込む宇都宮美術館の空間と作品で対話を交わすなど、日本初個展に相応しい、宇都宮美術館ならではの作品展開が行われる予定だ。これまでの代表的な映像作品を展示することで、作家の全体像にも迫る展覧会となる。