人間の多様性の成立過程を考察する。渡辺志桜里の個展「BLUE」が渋谷・SACSで開催へ

現代美術家・渡辺志桜里の個展「BLUE」が東京・渋谷にある展示スペースSACSで開催。特定外来魚・ブルーギルをモチーフに人間の多様性の成立過程について考察する作品《BLUE》が展示される。会期は2月23日~3月10日。

個展のイメージ

 CCCアートラボの企画により、現代美術家・渡辺志桜里の個展「BLUE」が東京・渋谷にある展示スペースSACSで開催される。会期は2月23日~3月10日。

 本展は、渋谷広域圏においてにぎわいをつくることを目指し取り組みが始まった「まちづくり協定」の一環として、CCCアートラボが企画した「Might Be Classics」プロジェクトの第3弾となる。渡辺は、3月10日まで「百年後芸術祭 -いちかわ芸術祭」で「種の保存法」に着目したインスタレーション作品《RED》を展示しており、今回の《BLUE》はその作品の対になる展示だ。

「RED」の展示風景より 提供=作家

 《BLUE》は、1960年に日本に持ち込まれた特定外来魚・ブルーギルをモチーフに、人間の多様性の成立過程について考察するもの。同作について、渡辺はステートメントで次のように述べている。

ブルーギルは「特定外来生物による生態系などに係る被害の防止に関する法律」により、“飼育・栽培、保管、運搬、販売・譲渡、輸入、野外に放つ事”が規制され、釣り場でも外来魚ボックスに棄てるなど、処理が勧められる魚である。ナショナル・ジオグラフィック(2022年1月12日)によれば、歴史を遡るとこの魚は、1960年にシカゴ市長から現上皇・明仁氏に送られ、戦後の爆発的な人口増加を支えるタンパク源として期待された”プリンスフィッシュ”だったという。いつしか忘れられ、人知れず繁栄した日本のブルーギルであるが、DNA解析によれば、送られた17匹のうち15匹が始祖となる事が明らかになっている。一方で世界的に生物多様性の減少ということが問題視され、“レッドリスト”正式名称“The IUCN Red List of Threatened Species”と呼ばれるリストが国際自然保護連合によって作成され、絶滅危惧種の保護が進められている。

ここで問題になるのは自然保護といった時にドメスティックな種の選択が迫られるという事である。在来種、あるいは外来種といったものが移り行く環境の中でいかに曖昧な定義であるか、選択されるものとされないもの……、環境保護と国家の関係を 「種」という視点から考察する本展は、少子化対策が国策として勧められる一方で、難民問題や種族間の争いなど、人間の多様性はいかにして成立するのか。異種を通して生物全体の種の絶滅と保護と排除の抱き合わせの関係を考察したいと思う。 

 なお、会期中の2月29日には渡辺と映画監督・坂本麻人によるトークセッションと、DJイベントも予定されている。そちらもあわせてチェックしてほしい。

編集部

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