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「アートフェア東京 2024」開幕レポート。“勝ち抜き”の理由を探る

「アートフェア東京2024」が3月7日に開幕を迎えた。今年のフェアの様子をレポートする。

文・撮影=王崇橋(ウェブ版「美術手帖」編集部)

展示風景より

 昨年初めて開催された新しい国際的アートフェア「Tokyo Gendai」は、日本のアートマーケットに新しい風を吹き込んだと言える。日本でもっとも歴史の長い「アートフェア東京」のマネージング・ディレクターである北島輝一に、これは同フェアにとって危機感があるのかと尋ねると、北島は笑顔で「一緒に日本のアートマーケットを開拓しようという仲間が増えた」とし、次のように述べている。

 「もちろんカラーが違う。我々は古美術から現代美術まで幅広いジャンルの作品を紹介しているが、彼らはどちらかというとクローバルな作品を日本にどう持ってくるかということをやっている。だから協業できるし、もっと協力関係がつくれると思っている」。

展示風景より

 国際的に見れば、TEFAFや古美術に特化した「フリーズ・マスターズ」を擁するフリーズ・アートフェアを除けば、幅広い年代やジャンルの作品を一堂に楽しめるアートフェアはそれほど多くない。アジア各国でも新しいアートフェアが続々と立ち上がり、その多くが同質化していくいま、こうした特殊性を保ってきたアートフェア東京は、思いがけず競争を勝ち抜き、着実に進歩を見せている。

 また、同フェアに出展するギャラリーの9割以上は国内のギャラリーであり、来場者のかなでは中国や韓国、台湾などアジア各国・地域のコレクターの姿も見受けられるが、そのメインは圧倒的に国内のコレクターが占めている。これは、国内の初心者コレクターに作品収集を始める入り口を提供すると同時に、国内ギャラリーにとっては国内のマーケットを深く掘り下げる機会にもなっていると言える。

 昨年のレポート記事でも言及したが、近年、アートフェア東京では「高い作品が売れる」という情報が伝わっており、クォリティの高い作品を出品するギャラリーが増えてきているという。今年のフェアには156軒の出展ギャラリーが参加しており、そのうち大物作家の作品を紹介するギャラリーも少なくない。

展示風景より、名古屋画廊のブース

 例えば名古屋画廊は、わずか数平米のブースでファン・ゴッホの素描《ショールを巻く女性》(1883)をはじめ、坂本繁二郎や山口長男、白髪一雄、田中敦子、草間彌生など近代・現代美術の巨匠たちの作品を一気に並べる。たけだ美術は、李禹煥の1970年代の作品から近作まで約20点を個展形式で紹介。思文閣は、関西のコレクターが所蔵していた白髪一雄の1950年代〜90年代の紙作品や水墨、油彩などのコレクションを初めて公開している。

展示風景より、たけだ美術のブース
展示風景より、思文閣のブース

 3月7日のプレビューでは、最初の数時間の来場者数が昨年より少ないという声が複数のギャラリーから聞こえたが、作品は着実に取引されている。フェア開始前のプレセールを含めれば、KOTARO NUKAGAや小山登美夫ギャラリー、MAKI Galleryでは約半分の作品を売却しており、そのうち1000万円を超えた作品も含まれているという。

展示風景より、KOTARO NUKAGAのブース
展示風景より、小山登美夫ギャラリーのブース

 北島は、「アートフェアはいまのアートマーケットを映し出す鏡だ」としつつ、ポスト消費社会の到来とともにアートはより有力な投資対象にもなると話している。今後はアートマーケットの価格推移に関する分析に力を入れつつ、コレクターを育ててより良い作品を収集してもらうよう、コレクターのための施策を考えていくという。

 北島が言うように、国内のアートマーケットにより多くの人が異なるアプローチから参加すれば、新たなアーティストやトレンドの台頭、そしてマーケットの活性化を促し、日本のアートシーン全体に新たな息吹をもたらすだろう。日経平均株価の高まりにより国内のマーケットがより注目を集めるなか、今後のさらなる成長と進化を見守りたい。

編集部

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