今年、80億ドル(約1兆800億円)という創業278年で過去最高の売上高を記録したサザビーズ。同社が、2024年に香港本社の移転と新しいメゾンの開設を発表した。
「Six Pacific Place」と名付けられた同社の香港新本社は、香港の金融の中心・金鐘(アドミラリティ)に位置するパシフィック・プレイスに移転予定。4フロアにわたる新社屋は約3300平米を有する。
いっぽう、香港のセントラルに位置する2階建てのメゾンは路面に面しており、年間を通じて一般公開される予定。約2200平米のスペースを持つこのメゾンは、アートやラグジュアリーの展覧会、ライブオークションの開催だけでなく、プライベートセール、デジタルプラットフォームなど、サザビーズのあらゆるサービスを紹介する予定だ。
また、道路から歩道橋まで多くのアクセスポイントを備えるこのメゾンは、コレクターや訪問者に継続的にエンゲージするいっぽうで、カフェスペースの開設により新たな体験を提供することを目指している。
サザビーズのアジア地区マネージング・ディレクターであるネイサン・ドラヒは声明文で、新しいメゾンについて次のようにコメントしている。
「サザビーズが香港のまばゆいばかりの新しいメゾンに入居することになり、大変うれしく思っている。新しいスペースは、3世紀近い歴史を持つ当社の伝統を物語る、すべてを包み込むような生き方を反映している。また世界でもっとも素晴らしい品々や体験を提供する、広くアクセス可能で没入型の、真に総合的なデスティネーションという当社のビジョンを体現している」。
今年、サザビーズのアジアにおけるオークション売上高は11億ドル(約1500億円)に達し、同社の2021年の過去最高記録に並ぶ。またアジアのコレクターによる一人当たりの入札額は、ほかの地域のコレクターに比べて平均で40パーセント上回っており、世界中のセールの新規入札者の約7割はアジアからの入札者だったという。
こうしたアジア市場の急成長を受けてサザビーズは2023年、上海にも新しい施設をオープンする予定。また来年、アジアで50周年を迎えるサザビーズは、香港や中国本土、シンガポールで大規模な巡回展を開催するほか、藤原ヒロシなどとコラボレーションしたイベントの開催も予定している。
なおクリスティーズも、2024年にアジア太平洋地域の本社を香港・セントラルにある新しい超高層ビル「The Henderson」に移転することを発表している。国家安全維持法の施行や新型コロナウイルスの影響でアートマーケットにおける香港の地位が低下しているとされているが、オークション大手のこうした動きは、依然として香港の強い影響力を示していると言えるだろう。