ガゴシアン
1980年、アメリカの美術商であるラリー・ガゴシアンは、ロサンゼルスに初のギャラリーをオープン。ジャン=ミシェル・バスキアやエリック・フィッシュル、ディヴィッド・サーレなど当時の若手作家の作品を紹介した。
86年には、ニューヨーク・マンハッタンの西23丁目に2号店をオープンし、ビジネスの中心をニューヨークに移転。2011年、ガゴシアンはアジアでの唯一の支店を香港にオープンした。
現在、ニューヨークにある5つのギャラリーに加え、ロンドン、パリ、ジュネーヴなど世界各地で17のギャラリーを運営しており、すべてのスペースをあわせると、その広さは東京ドームの約35パーセントに相当する約1万7000平米におよぶ。取り扱いアーティストは、現存アーティストのオークションにおける過去最高額を記録したジェフ・クーンズをはじめ、ピカソ、アンディ・ウォーホル、ウィレム・デ・クーニング、村上隆など約86人。
そんな世界最大のメガギャラリーである「ガゴシアン」が、さらに拡張している。
「ブルームバーグ」の報道によると、今月に入ってからガゴシアンはニューヨーク・チェルシーの西24丁目にある約2400平米のギャラリーと隣接する、メアリー・ブーン・ギャラリーとペース・ギャラリーの元スペースを引き継いだという。
かつてニューヨーク「アートシーンの女王」と称されたメアリー・ブーンは、脱税のため2年6ヶ月の懲役刑を服役しており、その判決の一部としてギャラリーを閉鎖せざるを得なかった。いっぽう、メガギャラリーであるペースは、ニューヨークにある複数のギャラリーを、チェルシー・西25丁目にオープン予定の新しい旗艦店に統合しているため、西24丁目のスペースをクロードした。
ペース
今秋、チェルシーに美術館レベルの旗艦店をオープンすることで、話題を集める「ペース」。
ペースは、1960年にアーネ・グリムシャーがボストンに設立。現在、ニューヨーク、ロンドン、香港、パロアルト、ソウル、ジュネーヴに9つのギャラリーを持ち、デイヴィッド・ホックニーやマーク・ロスコ、奈良美智、名和晃平、李禹煥など89人のアーティストの作品を紹介している。
2008年、ペースは初のメガギャラリーとして中国・北京に出店。しかし、今年7月に中国本土で事業を行う困難さを理由に、北京支店をクローズした。
チェルシーにある8階建ての新本社ビルは、約7000平米の面積を持つ。屋内と屋外を含む5階にわたる展示スペースは、現在ペースのニューヨークでの展示スペースを2倍以上に拡大し、ガゴシアンに肩を並べることになる。
オープン時には、各階の展示スペースで、アレクサンダー・カルダーやデイヴィッド・ホックニー、ロイ・ホロウェル、フレッド・ウィルソンなどの作家による5つの個展・グループ展を同時に開催する。
ハウザー&ワース
イワン・ワースとマヌエラ・ワース、ウルスラ・ハウザーが1992年にスイス・チューリッヒに設立したハウザー&ワースは、現在ニューヨークで2店舗を経営しており、ロンドン、ロサンゼルス、香港など世界中に合計10の展示スペースを持っている。
六本木ヒルズの入り口にある巨大な蜘蛛の彫刻で知られるルイーズ・ブルジョワや、マーク・ブラッドフォード、ジェニー・ホルツァー、ロニ・ホーン、ミカ・ロッテンバーグ、松谷武判など88人のアーティストの作品を取り扱っている。
ハウザー&ワースは、チェルシー・西22丁目に建築家のアナベル・セルドーフによって設計された、約3300平米におよぶ5階建てのギャラリーを建設しており、20年春にオープン。その新しいビルには、展示スペース、事務所、本屋、図書館、会議室などが含まれる。
ハウザー&ワースは、現代美術の展示だけでなく、トークイベントやワークショップなど、子供から大人までの教育プログラムにも注力。2014年、イギリス南西部の農村にアートセンター「ハウザー&ワース・サマセット」を設立し、展示のほか、学校や教育機関、一般人向けのアーティスト・キュレータートークやセミナーなどを行ってきた。また、20年にスペイン・メノルカ島に、同じ形式のアートセンター「ハウザー&ワース・メノルカ」も開設する予定となっている。