ゲストディレクターに音楽家の大友良英を迎える札幌国際芸術祭2017のテーマは「芸術祭ってなんだ?」。
今回、もっとも中心的な役割を持つモエレ沼公園会場では、「RE/PLAY/SCAPE」と題した展覧会を開催する。公園の象徴であるガラスのピラミッドを拠点として、モエレ沼公園の歴史と彫刻家、イサム・ノグチの視点を現代へつなぐ。
屋内空間では大友良英+青山泰知+伊藤隆之による100台以上の中古レコードプレーヤーを使用した作品《without records》の新作を発表。松井紫朗による有機的な構造のバルーン状の彫刻作品や、かつてモエレ沼公園が不燃ゴミの最終処分場であったという歴史に焦点を当てた伊藤隆介によるジオラマの映像作品、ナムジュン・パイクのアートロボット《K-567》(1963)などがコラボレーションしていく。
札幌芸術の森会場では、点在する建物とともに、野外美術館も含めた広大な森全体を使って「NEW LIFE :リプレイのない展覧会」を実施。ターンテーブルなど録音メディアを使った演奏の先駆者であるクリスチャン・マークレーと、前衛芸術家として60年代から伝説的な活動を展開してきた刀根康尚などが作品を設置。音を表現の入り口として、唯一無二の活動を続けてきたアーティストたちが集う。
このほか、前回に続き2回目の参加となる毛利悠子が、北海道の旅からインスピレーションを得たという新作を札幌市立大学芸術の森キャンパススカイウェイで発表。また吉増剛造「火ノ刺繍─『石狩シーツ』の先へ」(北海道大学総合博物館)、石川直樹展「New Map for North」(札幌宮の森美術館)、中崎透「シュプールを追いかけて」(札幌大通地下ギャラリー 500m美術館)、さわひらき「《うろ・うろ・うろ》」(北海道教育大学アーツ&スポーツ文化複合施設 HUG)、端聡「Intention and substance」(北専プラザ佐野ビル)など、個展形式のプロジェクトが多数ラインナップされているのも今回の特徴と言えるだろう。
また、「札幌と北海道の三至宝 アートはこれを超えられるか!」と題した企画では、1994年6月に開館した「レトロスペース坂会館(本館)」や「てっちゃん」こと阿部鉄男が、20年の歳月をかけて店内を様々なモノで埋め尽くした「大漁居酒屋てっちゃん」、2010年に閉館した北海道秘宝館「春子」など、芸術とは直接的に関わりがないとされてきたものが紹介されることにも注目したい。