片岡真実が共同キュレーターを務める「ヘルシンキ・ビエンナーレ2027」。新たに16組の参加作家を発表【2/2ページ】

日本とフィンランドの神話、そしてニョロニョロ

 もうひとつ、片岡とミラーが共有したのが、目に見えない世界や不可視のエネルギーへの関心だ。

 片岡は、日本の妖怪や民間信仰についてミラーと意見を交わすなかで、フィンランドの民族叙事詩『カレワラ』に登場する神々や精霊など、両国の文化に共通する世界観を見出したと説明した。

 ミラーも、古代の日本人とフィンランド人にとって、自然や目に見えない世界が身近な存在だったことを指摘。「古い信仰体系に戻ろうとしているわけではありません。しかし、目に見えるものがすべてではないという認識から、現代の私たちにも学べることがあるのではないでしょうか」と語った。

エスプラナーディ公園

 また、アーティストは不可視の現実を見せる「拡大鏡」のような役割を果たすことができるとし、フィンランドの神話や宇宙観に加え、北欧の先住民族サーミの文化にも目を向ける考えを示した。今回の参加作家には、サーミのアーティストも含まれている。

 こうした「未知なるもの」を象徴する存在として選ばれたのが、トーベ・ヤンソンによる児童文学、ムーミンの物語に登場する「ニョロニョロ」だ。ニョロニョロは、集団で移動し、言葉を発することのない謎めいた存在。夏至の前夜に雷からエネルギーを得るという性質も持つ。共同キュレーターのふたりは、ニョロニョロを、確かに存在しながらも完全には理解できないもの、そして未知の可能性に満ちた存在として捉えている。フィンランドを代表する物語のキャラクターが、現代美術展のテーマを読み解く手がかりとなる。

ユアサエボシが語る「未知なるもの」との関係

 発表会には、今回新たに参加が決定したユアサエボシも登壇した。ユアサエボシは、1924年生まれ、87年没という架空の昭和期の画家を設定し、その人物の作品として絵画を制作しているアーティストだ(12月27日まで練馬区立美術館で「ユアサエボシと戦後アヴァンギャルドの変身寓話集」展を開催しており、レポート記事はこちらから)。

プレス発表会に登壇した片岡真実、ユアサエボシ、アルヤ・ミラー 撮影:筆者

 片岡は、2022年の「あいち2022」の準備期間中にユアサの活動を知り、以来注目してきたと説明。今回の「Unknowns」というテーマにふさわしい作家として参加を依頼したという。ユアサにとって、本展が初めての海外での展覧会となる。

 ユアサは、架空の画家を生み出した背景について、若い頃に三島由紀夫や澁澤龍彦、横尾忠則らの影響を受け、彼らが活躍した1960年代に生きてみたいという思いがあったと説明した。自分が生まれた時代とのずれを埋めるため、別の時代を生きた画家を設定したのだという。

 その制作では、架空の画家が生きた時代以前の雑誌や写真、イラストなどを素材としてコラージュをつくり、それをもとに絵画へと展開している。既存のイメージを組み合わせる過程では、作家自身も予想しなかったイメージが生まれるという。「自分でも想像しなかった偶然の組み合わせを利用しながら制作しています。『Unknowns』は、まさに自分の制作スタイルにぴったりのテーマだと思います」。

 片岡によれば、会場ではユアサの絵画3点を、台湾とフィンランドのアーティストの作品と同じ展示室で紹介する予定だ。国や時代を異にしながら、昭和的な雰囲気やシュルレアリスムを思わせる表現に共通点を見出し、作品同士の新たな関係を生み出すことを目指す。

 自然と都市、科学と神話、可視と不可視、そして異なる文化や歴史。第4回ヘルシンキ・ビエンナーレは、こうした複数の領域を横断しながら、未知なるものへの好奇心と想像力を喚起する展覧会となりそうだ。

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