2021.12.11

バンクシー新作は反人種主義運動のチャリティアート。価格は25ポンド

今年10月には「愛はゴミ箱の中に」が28億円超で再落札されたバンクシーだが、今回発表された新作は、誰でも買えるチャリティTシャツだ。

文=鈴木沓子

バンクシーウェブサイトより、新作のチャリティアートTシャツ 出典=https://banksy.co.uk/
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 今年10月には《Love is in the bin(愛はゴミ箱の中に)》が28億円超で再落札されたバンクシーだが、このたび市民も気軽に購入できる新作を発表して話題になっている。

 日本時間で12月11日午前3時に公式ホームページやインスタグラムで更新された新作では、Tシャツで、1枚25ポンド(外税)、日本円で3720円。12月11日からブリストル市内の店舗で販売がスタートする。

 Tシャツやマグカップなど自身の作品の商品化を忌み嫌っていることで有名なバンクシーだが、今回のTシャツには理由がある。

「来週、コルストン像を倒した抗議運動で起訴された4人の裁判が始まる。そのためにTシャツをつくりました。明日から市内の店で販売します」とインスタグラムにも写真を投稿して告知している。

 「(収益金はすべて被告人に渡るので、彼らは飲みにいくことができるよ)」とも記して煙に巻いているが、要ようするに抗議者の裁判費用を捻出することが狙いだ。バンクシーはたびたびこうしたチャリティ目的の作品を制作しているが、バンクシーの「チャリティアート」の特徴は、デモや抗議運動をも支援する目的で行われることだろう。

 Tシャツはグレーの半袖で、胸元に故郷ブリストルの文字が大きくプリントされた「土産物風」。中央に描かれているのは、2020年6月にブリストル市内で開催されたブラック・ライブス・マター運動で集まった約1万5000人の抗議者たちに引き摺り下ろされた後、海へと投げ捨てられた17世紀の奴隷貿易業者エドワード・コルストンの銅像が建っていた「空の台座」だ。銅像を失った台座の周りには、反人種主義運動のプラカードや銅像を倒す際に使用されたロープが散らばっている。

 コルストン像の倒壊は国内外で大きく報道され「公共建築物に相応しくない銅像の撤去は歓迎」と喜ぶ声や「歴史修正主義につながる可能性がある」という批判の声も上がり、英国の脱植民地化問題をめぐって議論が続いている。

ブリストルミュージアム「Mシェッド」で展示されている倒壊され海に沈められたコルストン像 撮影=鈴木沓子

 バンクシーは昨年6月、コルストン像を引き摺り下ろそうとしている抗議者を含めた新しい銅像案のスケッチを発表。昨年7月にはアーティストのマーク・クインが反人種主義運動に参加していた黒人女性ジェン・レイド氏を模した銅像「ほとばしる力」を制作して、コルストン像の台座にゲリラ的に設置したが翌日には市当局によってすみやかに撤去されている。

 Tシャツは販売店舗は、地元のラジオ局Ujimaで発表される予定。

バンクシーがInstagramに投稿したコルストン像を引き摺り下ろそうとしている抗議者を含めた新しい銅像案のスケッチ 出典=バンクシーInstagramより