2020.3.4

プリツカー賞では初の女性建築家ユニット。イボンヌ・ファレルとシェリー・マクナマラが受賞

「建築のノーベル賞」とも言われ、これまでザハ・ハディッド、レム・コールハース、フランク・ゲーリーらが受賞してきたプリツカー賞。アイルランド出身の女性建築家ユニットであるイボンヌ・ファレルとシェリー・マクナマラが2020年のプリツカー賞を受賞した。

左から、イボンヌ・ファレルとシェリー・マクナマラ Photo by Alice Clancy. Courtesy of the Pritzker Architecture Prize
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 「建築のノーベル賞」とも言われるプリツカー賞が2020年の受賞者を発表。アイルランドのダブリンを拠点とする女性建築家ユニットであるイボンヌ・ファレルとシェリー・マクナマラが受賞した。アイルランドからの選出も、女性ユニットの選出も同賞史上初だ。

 1951年生まれのファレルと52年生まれのマクナマラは、ユニバーシティ・カレッジ・ダブリンの建築学部在学中に出会った。76年に大学卒業後、同大学で教える機会を与えられ、78年にはほかの3人とともに、建築事務所「Grafton Architects」を設立。2017年、「第16回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展」(2018)のキュレーターを務めた。

ユニバーシティ・カレッジ・ダブリンのアイルランド都市研究所 Photo by Ros Kavanagh. Courtesy of the Pritzker Architecture Prize

 これまでの主なプロジェクトとしては、ノース・キング・ストリート住宅(ダブリン、2000)やユニバーシティ・カレッジ・ダブリンのアイルランド都市研究所(ダブリン、2002)、ソルスティス・アーツ・センター(ナバン、2007)、ロレート・コミュニティ・スクール(ミルフォード、2006)、アイルランド財務部の事務所(ダブリン、2009)、リムリック大学医学部(リムリック、2012)などが挙げられる。

 同賞の審査委員会は、ふたりの受賞理由についてこうコメントしている。「彼女たちは建築に対して誠実なアプローチを取っており、設計での指揮の執り方、コラボレーションにおける信頼、仲間への寛大な心もある。とくに、18年のヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展で証明されたように、彼女たちは優れた建築のための絶え間ない関与、環境への責任ある姿勢があり、働く場所ごとに持つ独自性を受け入れながら国際的な視野も持っている」。

リムリック大学医学部 Photo by Dennis Gilbert. Courtesy of the Pritzker Architecture Prize

 ファレルは、「建築は、地球上でもっとも複雑で重要な文化活動のひとつと言える」としつつ、「建築家になることは大きな特権。今回の受賞は、私たちの建築に対する信念を裏付けるすばらしいものだ」と感謝を表す。

 1979年にアメリカ人実業家であるジェイ・プリツカーと妻のシンディによって設立されたプリツカー賞では、これまで48人(43組)の建築家が受賞してきた。なお日本人の受賞建築家としては、2019年に受賞した磯崎新をはじめ、丹下健三、槇文彦、安藤忠雄、妹島和世+西沢立衛、伊東豊雄、坂茂の8人がいる。