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INSIGHT - 2020.1.3

アカデミー映画博物館からM+香港まで。2020年、注目の新美術館をチェック(海外編)

2020年は、日本だけでなく海外でも注目の新美術館が誕生する。そこでここでは、とくに注目したい5つの美術館を開館順にピックアップしてお届けする。

 

アカデミー映画博物館のイメージ (C) Renzo Piano Building Workshop (C) Academy Museum Foundation Image from L’Autre Image

アメリカ初の大規模映画博物館。アカデミー映画博物館(年初開館予定)

アカデミー映画博物館のイメージ © Renzo Piano Building Workshop © Academy Museum Foundation Image from L’Autre Image

 アメリカ初の、映画や映画制作の芸術、科学、工芸、ビジネス、歴史に特化した大規模な映画博物館「アカデミー映画博物館(The Academy Museum of Motion Pictures)」が、2020年初頭にアメリカの映画産業の中心地であるロサンゼルスにオープンする。

 同館は、ウィルシャー・ブールバードにあるサバン・ビルを改装・拡張したもの。プリツカー賞の受賞建築家レンゾ・ピアノとその事務所「Renzo Piano Building Workshop」が改装設計を担当し、球形の付属棟を増築する。

 延床面積が約2万8000平米の博物館は、没入型の常設展と多様な企画展のための約5000平米の展示スペースや、ふたつの映画・公演劇場、教育スタジオ、パブリックイベントのためのスペースを備えている。

アカデミー映画博物館内部のイメージ © Renzo Piano Building Workshop © Academy Museum Foundation Image from Cristiano Zaccaria

 同館のコレクションには、1200万点以上の写真や19万点の映画・映像作品、6万1000点のポスター、10万4000点のプロダクションアート、そして映画の制作や歴史に関連した様々なオブジェや技術、紙の作品、アメリカや世界中の映画の歴史を扱った静止画や動画が含まれている。また2008年からは映画技術や衣装デザインなどの収集も行い、約2500点を収蔵する。

 こけら落とし展では、アメリカ初となる宮崎駿の回顧展「Hayao Miyazaki」と、アメリカの映画史においてアフリカ系アメリカ人の映画製作者に焦点を当てる展覧会「Regeneration: Black Cinema 1900-1970」が開催される。

 

アートを通して調和をもたらす美術館。和美術館(3月21日開館)

和美術館のイメージ © 和美術館

 中国の総合家電大手・美的集団(マイディア・ グループ)を創設・経営している何氏一族によって設立された「和美術館(HE Art Museum)」が、2020年3月21日に広東省仏山市に開館する。

 プリツカー賞受賞建築家・安藤忠雄が設計した同館は、延床面積1万6000平米。展示スペースは8000平米におよぶ。「中国近代美術コレクション展示室」と「世界現代美術展示室」を設けており、20世紀の中国近代美術と世界の現代美術というふたつのテーマの展覧会を展開する。

和美術館のイメージ © 和美術館

 「調和」をテーマにした建築のデザインについて、安藤は「伝統的な歴史と文化を現代美術と融合させ、文化と芸術の交流を通して、人々に長く大切にしてきた、調和のとれた平和な生活への願いをもたらします」とコメントしている。

 こけら落とし展は、コレクション展と企画展「From the Mundane World」によって構成。コレクション展では、同館が収集してきた近現代美術作品を紹介。いっぽう企画展では、人間と自然の生態系をめぐる現代美術を、地域や文化の持続可能性の視点から考察する展覧会が行われる。

 

フランソワ・ピノーのコレクションを展示。ブルス・ドゥ・コメルス(6月開館予定)

ブルス・ドゥ・コメルスの外観 © Pinault Collection

 グッチやサンローランなどを有するラグジュアリーグループ「ケリング」のCEOで、アート界にも絶大な影響力を持つ実業家、フランソワ・ピノー。そのアートコレクションの展示を目的に、ピノーがパリに個人美術館「ブルス・ドゥ・コメルス(Bourse de Commerce)」を設立する。

 2020年6月に開館予定の同館は、1767年に建設された元商品取引所を改修したものであり、安藤忠雄が改修の設計を手がけている。3000平米のモジュラー式の展示スペースは、プロジェクトに応じて100〜600平米の展示室に分けられ、写真、絵画、ヴィデオからインスタレーション、彫刻まで、そして大規模プロジェクトなど、様々なスケールやメディアの作品を展示することができる。

 展示スペースに加え、上映会や講演、会議、コンサートのためのオーディトリアムと、ヴィデオインスタレーションや実験的なパフォーマンスのためのブラックボックスシアターも備えている。

2019年7月時点、ブルス・ドゥ・コメルスの内部 © Pinault Collection

 ピノーは現在、20〜21世紀の美術品5000点以上を所有。ヴェネチアにもふたつの歴史的建築物を改修した美術館を所有している(いずれも安藤忠雄が改修設計を担当)。

 これらの3つの美術館のなかで、ピノーのコレクションを展示する中心的な役割を果たすと期待されているブルス・ドゥ・コメルスは開館後、コレクションからなる企画展や、主要アーティストの特別展、コミッション作品、会場にあわせたインスタレーションなどの展示を行う。なお、様々な文化・教育プログラムも開催予定だ。

 

モスクワのミュージアムエリアに新スポット。GES-2(9月開館予定)

GES-2の外観イメージ © RPBW, rendering by L’Autre Image

 レンゾ・ピアノとその事務所が設計を手がけるのが、2020年に9月に開館を予定しているロシアのプライベート・ミュージアム「GES-2」。

 同館は、ロシア国内第2位の天然ガス会社・ノヴァテク社のCEOレオニード・ミケルソンによって設立される美術館で、モスクワ・クレムリン宮殿付近の2万平米以上の旧発電所を改造したもの。2018年に建設活動が始まった同館は、モスクワのミュージアムエリアに位置し、ダーシャ・ジュコヴァのガレージ現代美術館、トレチャコフ美術館、プーシキン美術館と近接する。

GES-2の内部イメージ © RPBW

 館内には、展覧会やパフォーマンス、教育プログラムのためのスペースに加え、劇場、図書館、ショップ、カフェ、レストラン、レジデンスブロックも設置。敷地内の歴史的な赤レンガの建物(旧スミノフ・ウォッカウェアハウス)は、クリエイティブコミュニティ向けのオープンワークショップ施設に変身し、実験的・文化的センターになる。

 こけら落としは、アイスランドのアーティスト、ラグナル・キアルタンソンが美術館全体の空間を使って実施するサイトスペシフィックなプロジェクト「Santa Barbara」。6ヶ月間にわたるプロジェクトに加え、一連の展覧会や映画上映、音楽プログラム、学習活動も行われる。

 

アジア最大級のヴィジュアル・アート美術館。M+香港(12月〜2021年3月開館予定)

M+香港のイメージ © M+ Hong Kong

 2017年の開館を予定していた、アジア最大級のヴィジュアル・アート美術館「M+香港」が、2020年3月に竣工予定。環境整備やコレクションの搬入、展覧会の準備のため、開館は20年12月〜21年3月を予定している。

 香港の西九龍文化区に6万平米以上の延床面積を持つこのプロジェクトについて、ポンピドゥー・センターの元館長アルフレッド・パッケメントは「ポンピドゥー・センター以来のもっとも野心的で複雑で挑戦的な美術館プロジェクトだ」と評価している。建築設計は、プリツカー賞の受賞建築家ユニットであるヘルツォーク&ド・ムーロンが担当する。

M+香港のイメージ © M+ Hong Kong

 水平構造となるメインビルには、1万7000平米の展示スペースや3つの映画館、講義室、学習センター、ミュージアム・ショップ、パフォーマンススペース、カフェ、メディアテーク、パブリックルーフテラスなどが設けられている。また垂直タワーには、アーティストの映像作品を展示するためのLEDファサードをはじめ、図書館、アーカイブ、美術館オフィス、レストランなどが入るという。

 同館のコレクションは、1950年以降の美術をはじめ、建築やデザイン、映画、大衆文化など広範囲な視覚文化を扱うことが特徴。特筆すべきは、中国の現代美術を大量に収集しているスイス人のコレクター、ウリ・シグが1463点の現代中国美術品を同館に寄付したこと。また同館は、香港や中国本土、アジア周辺地域の文化に焦点を当てるプログラムも標榜している。

 今年6月以来、香港では大規模デモが多発し、政治的緊張が高まっている。この状況のなか、同館は20年3月に竣工して年内に開館できるのか。今後の状況を注視したい。