かつて中山道60番目の宿場町として栄え、現在も江戸時代の面影を色濃く残す滋賀県米原市の柏原宿。この歴史ある土地を舞台に、美術家/彫刻家・金氏徹平を招聘する現代美術展「金氏徹平 煙と霧 中山道柏原宿」が10月3日~12月13日の会期で開催される(開場は会期中の土日祝日のみ)。

本展は、滋賀県立美術館が2025年度より開始した、琵琶湖の湖北地域を舞台とする新たな現代美術プロジェクト「Art Spot in Kohoku(ASK)」の一環となるもの。高島市、米原市、長浜市の3市を会場に、3年度にわたって展開されるシリーズ企画で、地域に根差した風景や歴史、生活文化と現代美術を接続することを目的としている。「ASK」という名称には、「見る者の心に問いを投げかける」という意味も重ねられており、第1弾としては高島市勝野地区(通称・大溝地域)にてキュンチョメによる「キュンチョメ 100万年の子守唄」(2月21日~4月19日)が開催された。

第2弾となる今回は、米原市の柏原宿を舞台に金氏徹平の個展を開催する。金氏は1978年京都府生まれ。2001年に京都市立芸術大学美術学部彫刻科を卒業。ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートへの交換留学を経て、03年に京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程彫刻専攻を修了し、10年より同大学の専任教員を務めている。身の回りのモノを既存の意味や用途から解放してつなぎ合わせる、コラージュ的な手法によって作品を制作。現実と想像、過去と未来などが入り混じる風景をつくり出してきた。その表現方法は彫刻、インスタレーション、映像、パフォーマンスなど多岐にわたる。


本展のタイトルにある「煙と霧」は、金氏が自身の作品や展覧会のテーマとしてたびたび扱ってきたモチーフだ。昇る「煙」と、降りてくる「霧」。どちらも空気中に細かな粒子が漂うという点で視覚的には似ていても、異なる起源や性質を持つふたつの取り合わせは、境界を越えて生まれる変化や可能性を感じさせるものでもある。
本展では、このテーマのもと、金氏のこれまでの作品群を現地の空間にあわせて再構成して展示する。また、柏原の歴史や風土、人々の営みを手がかりに制作される新作インスタレーションや、ワークショップを通じた参加型作品なども展開される予定だ。金氏によるステートメントは次のとおり。
柏原には中山道の旧宿場町特有の雰囲気があり、遠く離れた場所のこと、遠く離れた時代のことを連想させられます。
かつては様々な人や文化や経済や流行が出入りし、接続される場であったことの名残を感じながらも、今は自然豊かで、むしろ落ち着いた親密な地域のコミュニティーの方を強く感じます。しかし、遠い未来を想像するときにはそれはまた違った状態かもしれないし、その気配を見出したり、妄想したりすることもできるでしょう。
時間や文脈や価値や場所や人の接続(もしくは切断)を現実とフィクションを織り交ぜながら、仮説的・仮設的に造形に置き換えていくことは私の制作や研究の根幹を成しています。
(中略)
「煙と霧」というタイトルは、見た目は似ていますが、起源の異なる現象が混ざり合うことをイメージしています。
煙は人為的で霧は自然に由来しているとも言えます。また、煙は下から昇り、霧は上から降りてきます。その間で思考や視点の往来が生まれ、新たな想像力が発動すること、遠くからたくさんの人がこの地を訪れること、近くの人がここではないどこかのことを想像すること、そんなことが起これば良いと思っています。
──プレスリリース「アーティスト・ステートメント」より

























