吉田修一の小説『国宝』、束芋による挿絵全500点を展示。「束芋画 国宝」が銀座で開催【2/2ページ】

作品を成立させるためには「理由」と「システム」が必要

 束芋はステートメントのなかで、自身にとって「絵を描くこと」は容易な行為ではなく、作品を成立させるためには「理由」と「システム」が必要だと述べている。本作では、約10年前に担当した吉田修一の新聞連載小説『惡人』で用いた手法の一部を引き継ぎながらも、一定の細さを保つ線や、感情や空気を色彩へと置き換える独自の方法を採用した。

 また、横長の和紙の右から左へ時間軸を設定し、前日の物語が翌日の場面へと連続していく構造も特徴のひとつだ。日々更新される新聞連載というメディアの時間性を画面のなかに取り込みながら、小説の流れそのものを視覚化している。

 新聞という日々消費される媒体のなかで生まれたイメージが、10年の時を経て和紙と絵具による物質的な作品として再生される本展。文学と美術、過去と現在、記憶と身体感覚が交差する世界を体感する機会となりそうだ。

束芋《国宝 #499~500》(2016-26) 和紙に墨と顔彩 Photo by Keizo Kioku