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2024.1.28

束芋の考えるアニメーションの拡張とは何か。新千歳空港国際アニメーション映画祭・トークレポート

第10回新千歳空港国際アニメーション映画祭が2023年11月2日〜6日の5日間にわたり開催された。本展に際して、映画祭コンペティション短編部門の国際審査員のアーティスト・束芋によるトーク「アニメーション表現のtabi」も実施。その内容をレポートする。聞き手は同映画祭の短編部門選考委員でありアーティストの岩崎宏俊が務めた。

文=塚田優

束芋
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アニメーションを拡張し続ける束芋

 世界のアニメーションシーンの最前線を、多様な視点で紹介してきた新千歳空港国際アニメーション映画祭。同映画祭で、今年短編部門の国際審査員を務めた束芋は、手描きのドローイングと日本の伝統的な木版画を思わせる作風で、アニメーション表現の拡張に長く取り組んできた。現代の日本社会のあり様をシュールかつシニカルに作品化してきた束芋であるが、そのキャリアはどのように展開してきたのだろう。トークイベントではまず自身の制作について、作家自身の言葉でプレゼンテーションが行われた。

 「もともと私は京都造形芸術大学ではデザインの学科にいて、グラフィックデザイナーを目指していました。しかし大学での卒業制作《にっぽんの台所》(1999)が学長賞を、そして同作品でキリンコンテンポラリーアワードの最優秀作品賞をいただき、それらの賞を持って臨んだ就職活動で『こういう作品、企業は嫌うんだよねぇ』と言われました。キリンコンテンポラリーアワードの後、美術の世界でいくつかの展覧会が決まり、目の前に与えられた現代美術の世界を精一杯進んできました」。

束芋 にっぽんの台所 1999 ヴェネチア・ビエンナーレ日本館での展示風景 (c)Tabaimo / Courtesy of Gallery Koyanagi photo by Hirotaka Yonekura

 束芋はアーティストとして2006年に原美術館での個展、同年、パリのカルティエでの個展を開催。2009年から翌年にかけて横浜美術館と国立国際美術館で個展「断面の世代」を開催するなど精力的に活動し、現在に至っている。

「ここ10年ほどのあいだに発表したインスタレーション作品をいくつか紹介しましょう。『AT ART UWAJIMA 2013』というプロジェクトでは愛媛県宇和島市にある木屋旅館を舞台に、永山祐子さんのリノベーションした建築とほしよりこさんが書いた小説とコラボレーションした《木屋の染み》(2013)を発表しました。ロサンゼルスのハマーミュージアムでは手描きのドローイングに映像を投影した《flow-wer arrangement》(2017)という作品を発表しています。大きな空間を、自分の作品の一部にしていく作品が多いです」。

束芋 木屋の染み 2013 (c)Tabaimo / Courtesy of Gallery Koyanagi photo by OMOTE Nobutada

 束芋はインスタレーションを構想するにあたって、どのような思考で作品を完成させるのだろうか。

 「与えられた空間のなかで、何を見たいのか、何ができるのかということをまずは考えています。でも自分の頭のなかで想像しうる程度のものを見たいわけじゃないからこそ、自分でつくってても予想がつかないようなところに到達できるアニメーションという技法を選んでいるのだと思います。私はストーリーをつくるのが苦手なので、コンテも描かずに制作をしています」。

束芋 flow-wer arrangement 2017 (c)Tabaimo / Courtesy of Gallery Koyanagi photo by watsonstudio

 聞き手を務める岩崎宏俊は、「展示が上手くいかなったことはあるのか?」と問いかけ、束芋は次のように回答した。

 「大学を卒業した後、鏡を使った作品をつくろうとしました。2×3メートルほどの大きな鏡の一面にドットを並べ、そこに映像を投影してドット上に映像が、鏡に鑑賞者が映りこむという、映像と鑑賞者を一画面に収めるインスタレーションを計画したんです。実際に30万円をかけて鏡を発注し、現場に搬入したのですが、思ったような効果が出ませんでした。泣く泣く、鏡の使用を諦め、スクリーンはシンプルな白いものに変更したことがあります。私の作品は映像がしっかり見られればそれでいいわけではなく、空間の中での映像効果というのが重要で、事前に投影実験をしたり、試行錯誤を経て完成します」。

岩崎宏俊と束芋

 束芋は舞台芸術とのコラボレーションにも取り組んでおり、その様々な試みについても紹介された。

 「2006年には振付家のオハッド・ナハリン氏とコラボレーションし、初めてシアター作品に参加することになりました。ほかにはピアニストのパスカル・ロジェ氏のリサイタルに映像を投影したり、杉本博司氏の杉本文楽《曽根崎心中》冒頭の『観音廻り』に映像を提供したりしています。このときは映像によって空間を広げていくことを考えました。『網の外』という作品は《網の中》(2017)の自作の映像インスタレーションを舞台作品に発展させたものです。昨年はサーカス・パフォーマーのヨルグ・ミュラーとコラボレーションし、《もつれる水滴》という作品をつくり日本とフランスでツアーを行いました。これらの舞台作品では私が演出という肩書きであったとしても、出演者や裏方、プロデューサーにまで協力してもらい、関係者全員で知恵を絞って、何ができるのか、どうすれば面白いか、ということを実験しながらつくり上げています」。

束芋が見たアニメーション映画祭