ボストン美術館の名品が一挙里帰り。奈良国立博物館で「南都仏画」展が開催へ

奈良国立博物館が、南都ゆかりの仏画・仏像の名品を集めた特別展「南都仏画―よみがえる奈良天平の美―」を開催する。会期は2026年7月18日〜9月13日。

釈迦霊鷲山説法図(法華堂根本曼陀羅) 奈良時代(8世紀) ボストン美術館 Photograph © Museum of Fine Arts, Boston

 奈良国立博物館が、アメリカのボストン美術館が所蔵する南都ゆかりの仏画・仏像の名品を多数紹介する特別展「南都仏画―よみがえる奈良天平の美―」を、2026年7月18日〜9月13日の会期で開催する。

 「南都」と呼ばれた奈良では、古代から連綿と仏教絵画が受け継がれてきた。奈良時代には国際色豊かな天平絵画が大寺院を荘厳し、平安時代には貴族文化を背景に優美な仏画が隆盛を迎える。さらに、南都仏教の復興期にあたる鎌倉時代以降は、天平の図像に基づく復古的な仏画が盛んに制作され、「南都絵所」と呼ばれた工房の絵仏師たちが仏画・絵巻の制作、仏像の彩色など多様な役割を担うようになった。

春日宮曼荼羅 南北朝時代(14世紀) ボストン美術館
Photograph © Museum of Fine Arts, Boston

 本展は、こうした「南都仏画」の展開を名品によって体系的にたどる初の試みとなる。最大の見どころは、ボストン美術館が所蔵する南都ゆかりの仏画が一挙に里帰りし、奈良国立博物館との2大コレクションが揃う点だ。約20年にわたる構想を経て実現した国際共同企画であり、仏教絵画研究にとっても画期的な機会となる。

 さらに、明治初期の神仏分離令により廃絶した内山永久寺(奈良県天理市)の旧蔵品も集結。同寺はかつて壮麗な伽藍を誇った南都の名刹として知られるが、本展ではボストン美術館所蔵の「四天王像」をはじめ、南都絵師が彩色を担った仏像・仏画の優品が紹介され、失われた寺院の記憶が現代に立ち上がる。

四天王像(広目天像) 鎌倉時代 建長5年(1253)頃 ボストン美術館
Photograph © Museum of Fine Arts, Boston

 南都仏画の精華を古代から中世、そして現代へと時代横断的に提示し、1300年を超える奈良の仏教文化の厚みを多角的に伝える本展に、ぜひ注目したい。

編集部