今週末に見たい展覧会ベスト17。藤田嗣治、日本美術の鉱脈、ゴッホに坂本龍一まで【5/6ページ】

今週開幕

「ペドロ・コスタ インナーヴィジョンズ」(東京都写真美術館

 東京・恵比寿の東京都写真美術館で、総合開館30周年記念「ペドロ・コスタ インナーヴィジョンズ」が開幕した。会期は12月7日まで。会場レポートはこちら。

 ペドロ・コスタは、1959年ポルトガル・リスボン生まれ。リスボン大学で歴史と文学を学び、映画学校では詩人・映画監督アントニオ・レイスに師事する。1989年の長編デビュー作『血』がヴェネチア国際映画祭で注目を集め、その後『骨』(1997)や『ヴァンダの部屋』(2000)で国際的評価を確立。カンヌ国際映画祭や山形国際ドキュメンタリー映画祭など受賞歴多数。ペドロは、2018年にポルトのセラルヴェス美術館で開催された「Companhia(コンパニア)」(ポルトガル語で「寄り添う」および「仲間」の意)展や、2022年から23年にかけてスペイン各地を巡回した「The Song of Pedro Costa」展など、映画だけでなく展覧会という形式においても国際的に高い評価を受けてきた。

 本展は、コスタが10代の頃に出会い深い影響を受けた、スティーヴィー・ワンダーのアルバム『インナーヴィジョンズ(Innervisions)』(1973)と同名のタイトルを掲げている。音楽を通して社会と個人の関係に迫ろうとしたこのアルバムの精神は、コスタの映像制作の方法論とも深く響きあっている。今回の展示では、ポルトガルで暮らすアフリカ系移民の歴史を照らし出した『ホース・マネー』(2014)など、コスタ作品において重要な役割を担う、ヴェントゥーラをはじめとする登場人物たちや、彼らが生きる場所に関わる映像作品に加え、東京都写真美術館のコレクションも紹介。コスタの映像表現とその背景にある歴史的・社会的文脈に触れることで「インナーヴィジョンズ」という主題を考察していく。

会期:2025年8月28日~12月7日
会場:東京都写真美術館
住所:東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
電話:03-3280-0099
開館時間:10:00~18:00(木金〜20:00) (8月28日〜9月26日の木金は〜21:00) ※入館は閉館30分前まで
休館日:月(祝休日の場合は翌平日)
観覧料:一般 800円 / 学生 640円 / 高校生・65歳以上 400円 / 中学生以下 無料

アレックス・カッツ「Four Seasons」(SCAI PIRAMIDE)

アレックス・カッツ Summer 17 2023 麻に油彩 121.9 × 182.9 cm Alex Katz is represented by GRAY Chicago/New York

 東京・六本木のSCAI PIRAMIDEで、今年98歳を迎えるペインター、アレックス・カッツの個展「Four Seasons」が開催される。会期は8月29日〜10月18日。

 アレックス・カッツは、1927年ニューヨーク・ブルックリン出身。54年に作品を発表し始め、以来、絵画、ドローイング、彫刻、版画など、様々な作品を生み出してきた。初期の作品は、テレビ、映画、広告など、ミッドセンチュリー期のアメリカの文化や社会の様々な側面からインスピレーションを得ており、過去半世紀において、確固たる画家としての地位を確立した。特徴的なストローク、多様な色彩、洗練された構図を駆使し、抽象と具象の両方の側面を併せ持つ、独特なリアリズムを生み出している。

 カッツが2022年に始めた最新シリーズ「 Seasons」は、四季の移ろいを即興的な手法でとらえ、iPhoneで撮影したスナップショットと簡単なスケッチから、広いキャンバスへと変換されるもの。東京で90年代以来の公式個展である本展では、同シリーズより、春夏秋冬の四季を描いた作品を展示。特有の色彩とストローク、リアリズムを見ることができそうだ。

会期:2025年8月29日〜10月18日
会場:SCAI PIRAMIDE
住所:東京都港区六本木6-6-9
電話番号:03-6447-4817
開館時間:12:00〜18:00
休館日:日、月、火、水、祝日
料金:無料

「sakamotocommon OSAKA 1970/2025/大阪/坂本龍一」(VS.(ヴイエス)

 うめきた・グラングリーン大阪にある文化装置「VS.(ヴイエス)」で、坂本龍一の大阪初となる企画展「sakamotocommon OSAKA 1970/2025/大阪/坂本龍一」が開催される。

 本展のテーマは「1970年の坂本龍一」。坂本は2016年以降、1970年の大阪万博で展示されたバシェの音響彫刻を演奏・録音する機会を得て、その音を自身の作品に取り入れている。本プロジェクトでは、1970年の大阪万博のために制作されたバシェの音響彫刻を展示するほか、東京藝術大学のバシェ修復プロジェクトチームが坂本のために制作した新たな音響彫刻の展示も紹介。

 また坂本の演奏データを愛用のグランドピアノで再生するプログラムや、東京都現代美術館でも展示された坂本龍一 + 高谷史郎《LIFEーfluid, invisible, inaudible...》や坂本龍一 + Zakkubalan《async–volume》、坂本龍一 + アピチャッポン・ウィーラセタクン《async–first light》なども展示される。

会期:2025年8月30日~9月27日
会場:VS.(ヴイエス)
住所:大阪府大阪市北区大深町6-86
開館時間:10:00~20:00 ※入場は19:30まで
休館日:会期中無休
観覧料(事前オンライン予約制):一般 2200円 / 18歳以下 1100円 / 大学生・専門学校生 1800円 / 未就学児無料

「蔦屋重三郎と版元列伝」(太田記念美術館

 東京・原宿の太田記念美術館で「蔦屋重三郎と版元列伝」が開催される。会期は8月30日から11月3日。

 江戸時代、浮世絵師や職人たちを統括し、企画や制作、販売を指揮したのが版元であった。とりわけ蔦屋重三郎(蔦重)は、その才覚で喜多川歌麿や東洲斎写楽をプロデュースし、浮世絵の黄金時代を演出するなど、浮世絵史においても大きな役割を果たした。蔦重が2025年のNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」の主役となり江戸時代の出版界が注目を集めるいま、浮世絵専門館である太田記念美術館は、版元という視点から浮世絵を紹介する展覧会が開催。

 本展で注目するのは、蔦重にとどまらず、浮世絵草創期から明治時代にいたる約230年のあいだに活躍した12の版元たち。彼らの企画力や出版戦略により、浮世絵がいかに発展してきたのかを選りすぐりの作品とともに見ることができる。版元の眼差しを通して浮世絵の歴史を振り返る展示は、同館ならではの企画となる。名品の背景にある版元と絵師たちの人間ドラマにも触れてみてほしい。

会期:[前期]2025年8月30日~9月28日、[後期]2025年10月3日~11月3日
会場:太田記念美術館
住所:東京都渋谷区神宮前1-10-10
電話:050-5541-8600
開館時間:10:30~17:30 ※入館は閉館30分前まで
休館日:9月1日、9月8日、9月16日、9月22日、9月29日〜10月2日、10月6日、10月14日、10月20日、10月27日
観覧料:一般 1200円 / 大学・高校生 800円 / 中学生(15歳)以下 無料