奈良博と京博、25年に同時に特別展を開催。万博からの集客狙う

京都国立博物館と奈良国立博物館が来年、まったく同じ会期でそれぞれ特別展を開催する。これを前に合同記者会見が東京国立博物館で行われた。

文・撮影=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)

左から、永島明子(京都国立博物館学芸部列品管理室長)、松本伸之(京都国立博物館館長)、井上洋一(奈良国立博物館館長)、岩井共二(奈良国立博物館学芸部美術室長)

 大阪・関西万博が開幕する2025年4月、関西の2つの国立博物館、奈良国立博物館(以下、奈良博)と京都国立博物館(以下、京博)がまったく同じ会期(4月19日〜6月15日)でそれぞれ特別展を開催する。これを前に、2館合同の記者会見を上野の東京国立博物館で行った。

 来年、開館から130年を迎える奈良博は、同館にとって史上初となる国宝展、特別展「超 国宝展ー祈りのかがやきー」を行う。巡回なはい。

 この展覧会では、奈良博設立のきっかけとなり、1875年から18回にわたり開催された奈良博覧会や、開館後に奈良博に陳列されてきた名品、そしてこれまでの企画展で紹介されてきた名宝が展覧される。

 並ぶ国宝は、飛鳥時代の仏教彫刻を代表する《菩薩半跏像(伝如意輪観音)》や《観音菩薩立像(百済観音)》、運慶の現存する最古の作例《大日如来坐像》、日本三大絵巻のひとつである《信貴山縁起絵巻 尼公巻》、古代刺繍工芸の最高傑作とされる《刺繍 釈迦如来説法図》、百済王が倭王のためにつくったとされる《七支刀》など、すべてが仏教・神道美術となる。仏教美術を専門とする奈良博ならではの構成と言えるだろう。なお決定済みの出品件数は現時点で100点となっており、最終的な数字は未定だという。

 奈良博館長・井上洋一は「奈良ならではの、奈良博らしい国宝展をやろうと始まった企画」としつ、「展覧会タイトルには選りすぐった国宝展というだけでなく、時代を超え文化の灯火を確実に次世代に引き継ぐという意味もある。奈良博の総力をあげて取り組む」と意気込みを見せた。

 いっぽう京博が開催するのは特別展「日本、美のるつぼー異文化交流の軌跡ー」だ。同展では、「世界に見られた日本美術、世界に見せたかった日本美術、世界と混じり合った日本の美術」という視点から、国宝16件、重要文化財50件を含む約200件を展覧する。こちらも巡回なしとなる。

 「世界に見られた日本美術」としては、ジャポニスムで人気を博した葛飾北斎の「富嶽三十六景」などを紹介。「世界に見せたかった日本美術」では、現存する日本最大の銅鐸で重文の《突線鈕五式銅鐸》や国宝の俵屋宗達《風神雷神図屏風》などを紹介。また、「世界と混じり合った日本の美術」には、奈良時代に唐三彩の技術によって日本で生産された重文《三彩釉骨蔵器》や空海が唐から持ち帰った国宝《宝相華迦陵頻伽蒔絵壗冊子箱》などが並ぶ。

 京博館長・松本伸之は、この展覧会の開催背景として「大阪万博との関わりが大きい。京都では国際的な催しに無関係ではいられない」と述べており、インバウンドを含めた万博からの集客も狙いたい考えだ。また、「この機会に改めて日本美術のことを知り、そのルーツや歩みを振り返る機会としたい」と、その意図を語っている。

 万博開催自体はいまだに賛否があるものの、こうした名品展を2つの国立博物館で同時に見ることができるのは貴重な機会と言って間違いない。

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