「没後100年 富岡鉄斎」(京都国立近代美術館)開幕レポート。絵も書も学問も、どこまでも「文人」を目指して
富岡鉄斎(1836〜1924)の足跡を展示換えを挟んで約350点の作品や所蔵品で回顧する展覧会「没後100年 富岡鉄斎」が京都国立近代美術館で開幕した。会期は5月26日まで。
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「最後の文人画家」と称えられる富岡鉄斎(1836-1924)の回顧展「没後100年 富岡鉄斎」が京都国立近代美術館で開幕した。会期は5月26日まで。展示換えを挟んで約350点を展示する。担当は同館主任研究員の梶岡秀一。
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鉄斎は幕末に京都の商家に生まれ、近世都市の商人道徳を説いた石門心学を中心に、儒学・陽明学、国学・神道、仏教等の諸学を広く学ぶとともに、南宗画、やまと絵等をはじめ多様な流派の絵画も独学。深い学識に裏づけられた豊かな画業を展開した。また、全国を旅して各地の勝景を探り、胸中に思い描いた理想の山水を表出させたことで、国内外で高く評価された。
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本展は鉄斎が2024年末で没後100年を迎えることを記念し、その画業と生涯を序章、第1章、第2章、終章の4部構成であらためて回顧するものだ。序章「鉄斎の芸業 画と書」では、まず鉄斎の画業を初期から晩期の手前までを一気にたどる。
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鉄斎の評価としてまずあるのが「学者」としての功績だ。幼少から儒学や漢詩文、国学、神道、仏教を学んだ鉄斎は、同時に南画、文人画、復古やまと絵なども独学。さらに書画でも知られるようになった。鉄斎の特徴は、こうした多岐にわたる文化をすべてひとつなぎとしてとらえ、確固たる文人であろうとした点にある。
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本章では鉄斎が三十代から八十代にいたるまでに描かれた、様々な山水図、肖像、詩書などが並ぶ。いずれも古典漢籍の深い造詣に根ざしたものであり、絵と書と学問をともに高めていった鉄斎の姿勢をうかがうことができる。
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第1章「鉄斎の日常 多癖と交友」では、京都の街中で友人たちと交流しながら文化的こだわりを深めていった鉄斎の生活をうかがえる品々を展示する。
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鉄斎の遺愛品は多岐にわたり、池大雅や青木木米の旧蔵品、友人である松浦武四郎の贈物、狩野家伝来のものなどを所蔵していた。また膨大な書物も、鉄斎の文人としての活動には欠かせないものだったといえる。会場ではこうした交友にゆかりのある硯や筆、書画を展示する。
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さらに、この章で目を引くのは膨大な量の印章コレクション。自刻の印章のほか、新旧の友人や先人が記したものなどが並ぶ。こうした多種多様な印章は、まさに鉄斎の交友を象徴しているといえるだろう。
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第2章「鉄斎の旅 探勝と探求」は、京都の鴨川や嵐山、山科、琵琶湖といった近隣から全国の名勝まで、文人・鉄斎にとって欠かせなかった「旅」に焦点を当てながら作品を紹介している。
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例えば 《耶馬渓真景図巻》(明治時代)は、大分・中津市の奇岩が並ぶ渓谷を描いた作品で、俯瞰で見た迫力ある景観が余すことなく表現されている。また、楠木正成が討ち死にした後に妻の久子が住んだ現在の大阪・富田林市の庵を描いた《楠妣庵図》(1894)や、三宅島に幽閉された英一蝶を描いた《英一蝶幽居図》(明治時代)など、歴史と土地を接続させた作品からは、鉄斎の土地と歴史への興味がうかがえる。
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終章「鉄斎の到達点 老熟と清新」は、鉄斎の画業の円熟期とされる七十〜八十代の作品を紹介する。
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本章でもとくに多くの人の目を引く作品と言えるのが《富士山図》(1898)だ。生涯において幾度も富士山を描いた鉄斎だが、本作はとくに異彩を放っているとされる。右隻に富士の山容を、左隻に火口をクローズアップするという独特の構図とともに、江戸期の文人である池大雅、高芙蓉、韓大年が連れ立って富士山、立山、白山の三霊峰に登った逸話を賛として記している。
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また、豆を蒔いて漢字の「鬼」を追い払う様をゆるやかな筆づかいで描いた最晩年の作《福内鬼外図》(1924)は、鉄斎の豊かな発想力をうかがえる作品だ。自由闊達なその筆遣いは、たんなる画家という枠組みに収まらず、老いてなお文人として高みを目指した鉄斎の精神も表している
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本展を担当した梶岡は記者内覧にて次のように語った。「鉄斎の絵画は山水画、それも晩年のものが代表的であるが、本展では若い頃の作品や静物の山水以外をモチーフとした絵画も数多く展示している。鉄斎の仕事における多彩な『まだら』をぜひ楽しんでほしい」。
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