創立150年を迎え、現在、特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」が開催中の東京国立博物館。その表慶館にて、個人や企業から集めた未来の国宝候補を展示する「150年後の国宝展―ワタシの宝物、ミライの宝物」展が一般公募型イベントとしてスタートした。東博において公募展は史上初。
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本展は、いまから150年後の西暦2172年に伝え残していきたい国宝候補を、その背景のストーリーとともに展示するというもの。まず企業部門では、会社の歴史の礎となったプロダクト、日本の社会の発展を担ったインフラ技術、人々の暮らしを豊かにした衣食住の文化、世界中で人気を博した日本発のエンターテインメントやスポーツカルチャー、そして未来をつくっていくための新しい技術などを取り上げ、紹介している。
東宝株式会社からは、「特撮」というジャンルを代表するキャラクター「ゴジラ」が登場した。畏怖の存在として誕生するも、時には人間を守る守護神のような存在であるゴジラ。特撮という表現方法も含めて、日本を表すアイコニック的存在として、今後も語り継がれていくかもしれない。また、同場所にてゴジラのピクトリアルスケッチも展示。第1作の劇中シーンがイメージイラストでまとめられた貴重な実物だ。表紙には円谷英二特技監督の署名も記載されている。
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世界中で人気を博すキャラクター「HELLO KITTY(以下、キティ)」は、2024年に誕生から50周年を迎える。日本のKAWAII文化を代表し、国内外における様々な企業やプロジェクトとコラボレーションをしてきたキティは、これからも人と人との橋渡しとなるような存在でいてくれるのではないだろうか。
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音声表現のみならず、新たなエンターテインメントの可能性を広げたと言っても過言ではないVOCALOIDの「初音ミク」。初音ミクの誕生は、専門的な知識の有無に関わらず、多くの人々がクリエイティブの世界に触れるきっかけとなった。
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「キッコーマンしょうゆ」は、江戸時代初期から下総国(現在の千葉県野田市)で製造され、現在まで日本の食文化を支えてきた。1950年代には世界展開がなされ、現在では全100ヵ国以上で使用されている。また、中央の「しょうゆ卓上びん」は、工業デザインの先駆者として世界的に有名なデザイナー、榮久庵憲司(えくあんけんじ)によって設計され、1961年に発売されたもの。機能性の高さとスタイリッシュなデザインが評価され、誕生から50年以上そのデザインを守り続けている。時代を象徴するデザインという意味でも、後世に語り継ぎたいプロダクトだ。
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時代を象徴するデザインに関連して、もうひとつ取り上げたいのが「au Design project」の携帯電話だ。このプロジェクトは、「デザインケータイ」というジャンルを生み出すなど、携帯電話に新たな概念をもたらした。現在の我々にとって携帯電話がなくてはならない存在であることを考えると、これらのデザインケータイは日本の工芸史においても語るべき存在と言えるだろう。
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映像作品を後世に残すという喫緊の課題に対する技術も紹介されている。IMAGICA GROUPによる「映像を未来へ繋ぐフィルム修復技術」は、映画フィルムの現像やプリント事業といった長年培った高度な技術を修復に活用。フィルムなどの劣化修復、クリーニング、さらにはメディアの変換といった様々な課題に取り組んでいる。デジタルメディアが主流となっていく今後、映像に込められた記憶を末長く未来へ残していくという技術は、今後非常に重要となっていくだろう。
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本展のもうひとつの特徴は、一般部門の「ミライの宝物」も紹介されている点だ。選考委員には富田淳(東京国立博物館副館長)、松嶋雅人(東京国立博物館調査研究課長)、山中俊治(デザインエンジニア・東京⼤学教授)、ヤマザキマリ(漫画家・文筆家・画家)、ミッツ・マングローブ(歌手・タレント)が参加し、残したいという想いがどれだけ強いか、また多くの人々がその想いに「共感」できるか、が選考基準となった。会場では、345点の応募から67点(うち20点は特別賞)が選定され、応募者のエピソードとともに展示されている。
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本展は、一般公募や企業と共創したという点が東博の展覧会としては非常に珍しく、展示を見ながら現在と未来に思考を行き来させるコンセプトが新しい視点だと言える。現在平成館で開催されている国宝展に足を運ぶ際には、ぜひ表慶館にも立ち寄ってみてほしい。