「地上に存在することは、それ自体、祝福であるのか」をテーマに、根源的な生の光景を出現させてきたアーティスト・内藤礼。その個展「内藤礼 生まれておいで 生きておいで」が、上野の東京国立博物館で開催される。本展はエルメス財団との共同企画。会期は6月25日〜9月23日。
内藤礼は1961年広島県生まれ、現在は東京を拠点に活動している。空気、水、重力といった自然がもたらす事象を通して「地上の生の光景」を見出す空間作品を生み出してきた。近年の大型個展としては、「明るい地上には あなたの姿が見える」(水戸芸術館現代美術ギャラリー、2018年)、「うつしあう創造」(金沢21世紀美術館、2020年)、「breath」(ミュンヘン州立版画素描館、2023年)などがある。また《このことを》(家プロジェクト きんざ、ベネッセアートサイト直島)、《母型》(豊島美術館)が恒久設置作品として知られる。
本展では、平成館企画展示室、本館特別5室、本館1階ラウンジの3ヶ所が会場。東博が所蔵する約12万件の収蔵品のなかから、内藤が「注文主など作り手以外の意図が制作に大きく関与するようになる以前につくられた縄文時代の土製品」を選び、東博の建築や歴史を独自の視点で読み解くことで、あらたな空間作品を制作するという。
また会場のひとつとなる本館特別5室では、長年閉ざされていた大開口の鎧戸が開放。場の本来の姿が顕れるようにと、カーペットと仮設壁が取り払われ、建築当初の裸の空間が出現。空間を自然光が満たす。
なお本展は、9月7日より銀座メゾンエルメス フォーラムにおいて開催される同名展覧会(〜25年1月13日)の空間へと続き、再び東博へと戻るという構成。2会場にまたがる空間構成は内藤が初めて見出したもので、重なり合いながらも隔たりをもつ2つの場を、連作の絵画と立体作品がつなぐという。