「内藤礼 うつしあう創造」が金沢21世紀美術館で開幕。過去最大規模の個展で「創造」と向き合う
小さな人の像や絵画作品、光、水といった自然のエレメントによって、根源的な生の光景を出現させてきた内藤礼。その過去最大規模の個展となる「内藤礼 うつしあう創造」が、金沢21世紀美術館で開幕した。
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「地上に存在することは、それ自体、祝福であるのか」をテーマに、根源的な生の光景を出現させてきたアーティスト・内藤礼。その過去最大規模の個展となる「内藤礼 うつしあう創造」が、金沢21世紀美術館で開幕した。
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内藤礼は1961年広島県生まれ、現在東京都在住。91年に佐賀町エキジビット・スペースで発表した「地上にひとつの場所を」で注目を集め、97年には第47回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展の日本館で同作を展示。これまでの主な個展に「みごとに晴れて訪れるを待て」(国立国際美術館、大阪、1995)、「Being Called」(フランクフルト近代美術館企画、カルメル会修道院、フランクフルト、1997)、「すべて動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している」(神奈川県立近代美術館 鎌倉、2009)、「信の感情」(東京都庭園美術館、2014)などがある。
近年では、2018年に展覧会「内藤礼―明るい地上にはあなたの姿が見える」を水戸芸術館現代美術ギャラリーで開催。自然光のみで展示を行う初の試みは、記憶に新しい。
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本展は、この水戸芸術館での個展が開幕してから2年あまりかけて準備が進められてきたもの。担当キュレーターの横山由季子は「空間全体が大きなひとつの作品のようになっている」と語る。昼間は自然光のみで、夕方からは作品としての明かりが灯る空間。展示に章構成はない。
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内藤を代表するモチーフである木製の小さな人や、空気で揺らめく白く細い糸、目を凝らさないと見えない無数のガラスの球体、あるいはガラス瓶や水滴、小型の電球、ベンチなどが、文字通り美術館の空間に溶け込み、地続きになっているような感覚を抱く。
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これまで、「『人(わたし)がつくる』を超えること」を問い続け、自然から受け取ることで作品をつくり続けてきた内藤。今回は、その内藤が初めて「創造」と向き合う機会となったという。タイトルに込めた意味について、内藤はこう語る。
「『創造』という言葉を使ったのは初めて。時期が来たのだと思う。作品をつくることは『自我の表出』という面があるが、私はそれに違和感があった。はたして『私を伝えたい』というのは創造なのか。『人(わたし)がつくる』を超えることを考えてきた私が、今回はあえて『創造』という言葉で作品をつくろうとした」。
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「うつし」も重要なキーワードだ。人間と自然、わたしとあなた、あるいは生と死のように、何かと何かのあいだに生じる様々な「うつし(移し、写し、映し、遷し)」。こうした「うつしあう」両者のあいだにあるものこそが生気であり慈悲であり、生へと向かおうとする心の動きこそが「創造」なのだと内藤は話す。
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こうした何かと何かが「うつしあう」構造は、本展を構成する核だ。例えば、展示室の両壁に配された小指の爪ほどの鏡や、船のような台座に佇む70体以上の小さな《人》と鑑賞者の関係、あるいは円形の展示室に開けられた窓のような隙間。こうした様々なレベルでの「うつしあい」のあいだに、内藤は「豊かなものが生まれるといいな」という希望を抱く。
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「作品とは、見る人の心の状態やその人をうつしだすもの。目の前にあるものはよいものであると思いたい、思えるだろうか」。コロナ禍のなか再開する金沢21世紀美術館で、作品と向き合いながら、内藤の言葉を反芻したい。