内藤礼は1961年広島県生まれの美術家。85年に武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科を卒業。現在は東京を拠点に活動している。
91年に佐賀町エキジビット・スペースで発表した「地上にひとつの場所を」で注目を集め、97年には第47回ヴェネチア・ビエンナーレの日本館にて同作品を展示。フランクフルトのカルメル会修道院での「Being Called」(1997)や、東京都庭園美術館での「信の感情」(2014)など、歴史的な場所で個展を開催してきた。
内藤は一貫して「地上に存在することは、それ自体、祝福であるのか」という問いかけをテーマに制作している。「きんざ/このことを」(2001、直島・家プロジェクト)や「母型」(2010、豊島美術館)など、自然や建築空間と呼応するパーマネント作品も手がけており、それらに一貫される「永続する自然の動きと私たちとを貫く連続性」を可感化したスタイルは、国内外で高い評価を得ている。
国内において14年以来の個展であり、過去最大規模となる「内藤 礼—明るい地上には あなたの姿が見える」展では、「光」を作品の根源のひとつとしてきた内藤自身の旨により、初めて自然光のみでの展示を実践。光と生命と芸術がけっして分別されえない「地上の生の光景」を見つめる空間を生み出すことを試みるという。
これまでも、光、空気、風、水、重力といった無尽蔵の自然と、それらがもたらす色彩や音を受けとる地上の生を見つめ、空間作品として昇華してきた内藤。自然光とともに構成される新作群に期待したい。