鉄という素材に魅了され、素材本来の硬質感や重量感、さらには彫刻=塊という概念からも解放された作品をつくり続けてきた青木野枝。その個展「光の柱」が、10月14日より千葉の市原湖畔美術館で開催される。
青木は1958年東京都生まれ、埼玉県在住。1980年代の活動当初から鉄板をパーツに溶断し、溶接してくみ上げるシンプルな作業を繰り返すことで完成する作品を制作。これまで越後妻有・大地の芸術祭(2003、2006、2009、2012、2015)、 瀬戸内国際芸術祭(2010、2013、2022)などの芸術祭では地域の自然や歴史を汲み取ったサイトスペシフィックな作品を発表し、主な個展には長崎県美術館(2019)、霧島アートの森(2019)、府中市美術館(2019)、豊田市美術館(2012)、目黒区美術館(2000)などがある。
本展は、青木が同館の特徴的な地下からの高さ9メートルの吹き抜け空間に注目してその構想を開始。ここに新作《光の柱》を制作するとともに、展覧会タイトルも決定した。2011年以来、《ふりそそぐもの》をシリーズで制作してきた青木だが、本展では地からのぼり、ふりそそぐ、上昇と下降を繰り返す“動体”のような作品を制作するという。
今回の新作について、青木はステートメントで次のような言葉を寄せている。「この場には、地からのぼっていくものをつくりたいと思った。上昇する水や闇や光、そして匂いの粒子やケミカルな粒子たち。それはまた上方から降りそそぐものでもある。上昇と下降を繰り返す、動体の光の柱をつくりたいと思った」。
ほかにも、《core》をはじめ大型作品数点が展示予定。また、会期中の10月29日には鉄について考え、制作するワークショップも行われ、アーティストとともに鉄を溶断して小さな作品がつくれる機会をお見逃しなく。