令和2年度芸術選奨、大臣賞に青木野枝、宮島達男、宇川直宏ら。新人賞にはエキソニモなど

文化庁は令和2年度(第71回)の芸術選奨受賞者を発表。美術関係者では青木野枝、宮島達男、宇川直宏らが大臣賞に選ばれた。

「宮島達男|クロニクル1995-2020」(千葉市美術館)にて、宮島達男

 美術、音楽、演劇映画など芸術11部門において、優れた業績を上げた、または新生面を開いた人物に対して贈られる令和2年度(第71回)芸術選奨。その受賞者が発表された。文部科学大臣賞は18名、文部科学大臣新人賞は11名となった。

 「美術」部門では、青木野枝と宮島達男が「美術」部門大臣賞に選出。また、同新人賞には千房けん輔と赤岩やえのふたりによるエキソニモが選出された。

 青木については、「伝統的金属彫刻から離れ,独自な道を切り拓(ひら)いてきた」と評価。「令和元年から令和2年にかけて国内3ヵ所の公立美術館で開催された大規模な個展では、光溢(あふ)れる鉄の森を実現し、新しい日本の彫刻のかたちを表した」としている。

 青木野枝は1958年東京都生まれ。81年武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒業、83年同大学院造形研究科(彫刻コース)修了。活動初期より、工業用の鉄板を円などの基本となるかたちに切り出し、それらをつなぎ合わせるように溶接した彫刻作品を手がけてきた。2019年には、関東では20年ぶりとなる大規模個展「青木野枝 霧と鉄と山と」(府中市美術館)を開催。また同年に「青木野枝 ふりそそぐものたち」を 長崎県美術館で、「霧と山」を鹿児島県霧島アートの森で開催した。

 また宮島については、昨年の千葉市美術館での個展を「その実践の多様な発展を総覧する好機」と評価。また、東日本大震災の鎮魂や記憶の継承を目指す「時の海-東北」プロジェクトの最新作も「東日本大震災以降の重要な取組み」としたうえで、「令和2年は、氏の功績を過去作から最新作まで俯瞰(ふかん)する千載一遇の年であった」と振り返った。

 宮島達男は1957年東京都生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻修了。88年のヴェネチア・ビエンナーレで若手作家部門「アペルト」に参加し、LEDの光が数字を刻む《Sea of Time》で注目を浴びる。また99年の第48回ヴェネチア・ビエンナーレには日本館代表作家として参加し、2400個のガジェットで構成された《MEGA DEATH》を発表した。発光ダイオード(LED)を使用した作品を多く手がけ、「それは変化し続ける」「それはあらゆるものと関係を結ぶ」「それは永遠に続く」という3つのコンセプトをもとに、時の流れや人間の営みについて考察したインスタレーションなどを発表している。

「宮島達男|クロニクル1995-2020」(千葉市美術館)展示風景より、宮島達男《Floating Time》(2000)

 また新人賞を受賞したエキソニモは、昨年東京都写真美術館で開催された「エキソニモ アン・デッド・リンク」が評価された。なお、美術部門では複数名による創作集団への贈賞は初めてとなったが、千房、赤岩という2名のアーティストによる不可分なユニットでこその活動が評価された。

エキソニモ「UN-DEAD-LINK」(東京都写真美術館)展示風景より

 「美術」部門の選考審査員は、笠原美智子(公益財団法人石橋財団アーティゾン美術館副館長)、片岡真実(森美術館館長)、鴻池朋子(美術家)、菅谷富夫(大阪中之島美術館館長)、柳原正樹(京都国立近代美術館長)ら10名が務めた。

 なお、ほかにも美術関係者としては、「芸術振興」部門の大臣賞に、映像、グラフィックデザイン、VJ、文筆、キュレーションなど多岐にわたって活動してきた宇川直宏が選出。宇川が主催してきた開局から10年となるライブ配信チャンネル「DOMMUNE」がひとつの「作品」として評価されてきたとし、「世界中のライブ・イベントが突如中止を余儀なくされたこの年に改めてそのような 『作品』の価値が認められた」と評した。

 また同部門新人賞にはプロデューサー、キュレーターの相馬千秋が選ばれた。「みちのく巡礼アートキャンプ」や「シアターコモンズ」といった取り組みが評価されている。

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