2019.10.26

関東では20年ぶりとなる大規模個展。「青木野枝 霧と鉄と山と」が府中市美術館で開催

鉄や石膏という固く思い素材を用いながら、軽やかな彫刻作品を手がけてきた青木野枝。その関東では20年ぶりとなる大規模個展「青木野枝 霧と鉄と山と」が、府中市美術館で開催される。会期は12月14日〜2020年3月1日。

青木野枝 天蓋Ⅰ 2016 ギャラリー・ハシモトでの展示風景 撮影=山本糾 Courtesy of ANOMALY
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 青木野枝は1958年生まれ。鉄板から円や細片を溶断して空間に展開し、新たな彫刻のかたちを模索し続けてきた。2017年には、女性として初めて第40回中原悌二郎賞を受賞。今年7月には鹿児島県霧島アートの森で個展「霧と山」を開催するなど、精力的に活動を行っている。

 そんな青木の関東では20年ぶりとなる大規模個展「霧と鉄と山と」が、府中市美術館で開催される。会期は12月14日~2020年3月1日。

青木野枝 霧と山 2019 「青木野枝 霧と山」(鹿児島県霧島アートの森、2019)での展示風景 写真=山本糾 Courtesy of ANOMALY

 大気や水蒸気をモチーフに、万物が移ろいゆくなかの生命の尊さを表現する青木。作品のほとんどが展示場所にあわせてつくられ、展覧会が終わると解体される。青木はこの制作と設置、解体という循環こそを自らの「彫刻」としてとらえ、様々な場所で実践してきた。

 本展では、最初期の丸鋼で造形した彫刻などの旧作に加えて、美術館の空間を活かした新作を展示。また12年以降に新たな展開を見せた、石膏の白い表面が大きな塊をつくる「原形質」シリーズも紹介する。同シリーズは鉄を切ってつなげるこれまでの線の彫刻とは対称的なものだが、石鹸や卵などの面を持つ素材はすでに登場していたという。会場では石膏と鉄の作品を同時に展示し、「なぜいま塊の彫刻なのか」を探る。

青木野枝 原形質/2015 2015 ギャラリー・ハシモトでの展示風景 写真=山本糾 Courtesy of ANOMALY

 なお現在は、初期から最新作までの図版や制作ドキュメントを収録した本展と「青木野枝―霧と山」(鹿児島県霧島アートの森)の共同公式図録「流れのなかに ひかりのかたまり」も販売中。本展に寄せて「私には世界がこう見えている。でも、もちろん他の人は違う。みんな違うということを言っていきたい」と語る青木が見せる、動き続ける彫刻のいまを目撃したい。