ステファニー・クエールから万博と仏教、布施琳太郎の個展まで。今週末に見たい展覧会ベスト10

今週開幕した・閉幕する展覧会から、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

Crow sketch © Stephanie Quayle Courtesy of Gallery38

鳥を通じて人間社会の様相を見る。ステファニー・クエール「CROW:烏」(KAMU kanawaza)

©Stephanie Quayle Courtesy of Gallery38

 金沢市の私設美術館「KAMU kanazawa」で、動物の彫刻作品で知られるステファニー・クエールの新作個展「CROW:烏」がスタート。会期は2026年8月2日まで。クエールのインタビューはこちら

 本展では、24羽の烏彫刻によるインスタレーションを会場に展開。同館館長が「金沢は街中に烏が多く、よく歩いている」ことに気づき動画を撮り溜めていたことが本プロジェクトのきっかけとなっている。人間社会と共存し利用しながら生きる烏を通じて、あらためて見えてくる人間社会の様相を再認識させられることだろう。

会期:2023年8月2日~2026年8月2日
会場:KAMU kanazawa
住所:石川県金沢市広坂1-1-52
開館時間:11:00〜18:00
休館日:月(祝日の場合は開館) 
料金(全スペース共通チケット):大人1日券 1500円、2日間券 2000円、3日間券 3000円 / 中高生1日券 1000円、2日間券 1500円、3日間券 2500円 / 小学生以下無料

日本が万博に出品してきた仏教に関する造形物に注目。「万博と仏教 ―オリエンタリズムか、それとも祈りか?」(高島屋史料館 企画展示室)

第5回パリ万国博覧会 「Le Petit Journal (複製)」(1900) 乃村工藝社所蔵

 19世紀以降の万国博覧会において、日本が出展してきた多くの仏教に関係する造形物に注目する展覧会「万博と仏教 ―オリエンタリズムか、それとも祈りか?」が大阪府大阪市の高島屋史料館 企画展示室で8月5日より開催される。

 明治政府として初の公式参加となったウィーン万国博覧会(1873)では、《鎌倉大仏頭部の張子》や《五重塔の模型》が展示され、さらには、シカゴ万国博覧会(1893)で建設された《平等院鳳凰堂外観を模した日本館》では、仏教イメージは展示物だけにとどまらず、パビリオンの外観そのものにも表出した。また、1970年にアジア初の万博として開催された日本万国博覧会(大阪万博)では、博覧会における仏教イメージが、オリエンタリズムから宗教的意味を帯びる存在へと変化したという点にも注目することができる。

 2025年の大阪・関西万博を前にして、近代仏教の新たな魅力が発見される機会となるだろう。

会期:2023年8月5日〜12月25日
会場:高島屋史料館 企画展示室
住所:大阪市浪速区日本橋3-5-25 髙島屋東別館3階
開館時間:10:00〜17:00 ※入場は16:30まで 
休館日:火、水
料金:無料

絶縁を余儀なくされる未来社会のなかで。布施琳太郎「絶縁のステートメント」(SNOW Contemporary)

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 布施琳太郎の個展「絶縁のステートメント」が東京・六本木のSNOW Contemporaryで8月5日まで開催中だ。

 布施は1994年生まれ。急速に発達するメディア環境において、人間の認知や慣習、コミュニケーションのあり方といった可視化されにくい意識の変容や違和感を顕在化させるアーティストだ。絵画や映像作品の制作に加え、批評や詩の執筆、キュレーションなどその活動は多岐にわたっている。

 本展では、「人と人がコミュニケーションをした場合、その二人は絶縁しなければならない未来社会に人類が制作した(とされる)映像作品と数展の平面絵画」を発表。「すべてが現在のなかで操作可能な変数になってしまった時代において、展覧会は異なる時間感覚を再起動する装置であって欲しい」と願う布施は、AI技術が進展し、大きく変動する社会に対していかなる表現を展開するのだろうか。

会期:2023年6月23日〜8月5日
会場:SNOW Contemporary
住所:東京都港区西麻布2-13-12 早野ビル404
電話番号:03-6427-2511
開館時間:13:00~19:00
休館日:日、月、火、祝 
料金:無料

ふたりの彫刻作品の関係性に注目。堀内正和・冨井大裕「拗らせるかたち」(ユミコチバアソシエイツ)

トルソ、或いはチャーハン #8 2023
©︎Motohiro Tomii, Courtesy of Yumiko Chiba Associates.

 ユミコチバアソシエイツで開催中の堀内正和(1911〜2001)と冨井大裕(1973〜)の2人展「拗らせるかたち」が8月5日で閉幕する。

 堀内は戦前から戦後にかけて活躍した彫刻家。「日本の抽象彫刻のパイオニア」とも言われ、知的でありながら諧謔味やユーモアを含んだ柔軟な思考をもとに抽象形体を追及し、作品を発表してきた。いっぽう冨井は、現代日本を牽引する彫刻家だ。1999年に武蔵野美術大学大学院造形研究科彫刻コースを修了、彫刻についての思索を起点とした美術表現の可能性を探り続けてきた。

 本展は、冨井のキュレーションによって堀内と冨井の作品が展示される2人展。近代から現代に至る先駆けとして堀内が展開した抽象彫刻と、冨井の彫刻が並ぶ会場では、作品と作品の関係が生む相互作用にも注目したい。

会期:2023年6月17日~8月5日
会場:ユミコチバアソシエイツ
住所:東京都港区六本木6-4-1 六本木ヒルズ ハリウッドビューティープラザ3F
電話番号:03-6276-6731
開館時間:12:00~19:00
休館日:日、月、祝
料金:無料

「もの派」や「具体美術協会」など現代美術の黎明期を支えたアーティストたち。「現代美術の夜明け」(GALLERY SCENA)

白髪一雄 作品

 現代美術の黎明期にいたアーティストたちによる約30点の作品を展示する「現代美術の夜明け」がGALLERY SCENAで8月5日まで開催中だ。

 戦後間もない時代、多くの日本アーティストたちは新しい表現を求めて作品を発表してきた。その流れの根元には多摩美術大学の斎藤義重、その薫陶を受けたなかから現れた「もの派」、大阪では吉原治良を中心とした「具体美術協会」、その吉原が戦前に活動した「九室会」、反芸術・ダダイズムの流れの源流にいた「ハイレッド・センター」などのアーティストが挙げられる。

 出展作家は、斉藤義重、中西夏之、山口長男、白髪一雄李禹煥、吉原治良、菅木志雄、中川幸夫、赤瀬川原平、三木富雄、菅井汲、藤田嗣治、東郷青児。

会期:2023年7月14日~8月5日
会場:GALLERY SCENA
住所:東京都渋谷区神宮前6-15-17 クレストコート神宮前1F
電話番号:03-6805-0887 
開館時間:12:00~19:00
休館日:日、月
料金:無料

都市の「時間を引き延ばす試み」。トモトシ 個展 「絶望的遅延計画」(TAV GALLERY)

メインビジュアル

 都市空間や公共のルールを行動によって変化させる「都市との関わり方」をテーマとするアーティスト・トモトシよる個展「絶望的遅延計画」がTAV GALLERYで8月6日まで開催されている。

 都市とロマンスの関係性を可視化した個展「Romantic Bomb」から1年を経て、トモトシは本展に寄せて次のように語っている。「東京で何かアクションを起こすと、一瞬だけその場が変容するように見えても、すぐにいつもの日常が戻ってくる。革命を起こさせない国で暮らし、何かを変えることを諦めた(絶望した)人間の最善の策は、いまの現状を維持することしかないかもしれない。今展では、東京のなかでもとくにジェントリフィケーション(=革命因子の排除?)が激化しているように感じられる渋谷を舞台に、複数の都市的な場面で『時間を引き延ばす試み』を提案する」。

会期:2023年7月21日~8月6日
会場:TAV GALLERY
住所:東京都港区西麻布2-7-5 ハウス西麻布4F
開館時間:13:00~20:00
休館日:月、火 
料金:無料

膨大な資料から見る映画監督・大島渚の挑戦。「没後10年 映画監督 大島渚」(国立映画アーカイブ)

大島渚 『愛の亡霊』撮影スナップ 1978 ©大島渚プロダクション

 東京・京橋の国立映画アーカイブで開催中の企画展「没後10年 映画監督 大島渚」が8月6日で閉幕する。

 大島は1932年生まれ。京都大学法学部を卒業後、松竹に入社し大船撮影所で助監督として修業を始める。『絞死刑』や『戦場のメリークリスマス』などで活躍し、絶えず映画の自由を追い求め、社会の暗部に焦点を当てた作品や、映画の常識を破るような映画を撮り続けてきた。

 本展では、大島自らが体系的に遺した膨大な作品資料や個人資料をベースに、その挑戦的な知性と行動の多面体に紹介する。

会期:2023年4月11日~8月6日
会場:国立映画アーカイブ
住所:東京都中央区京橋3-7-6
電話番号:050-5541-8600 
開館時間:11:00~18:30(金〜20:00) ※入室は閉室の30分前まで ※上映は企画によって異なるため、公式サイトを参照
休館日:月
料金:一般 250円 / 大学生 130円 / 65歳以上・高校生以下無料

叙情的で繊細な「銅版詩」を描く。「南 桂子 銅版画展-静かな王国」(ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション)

南桂子 湖畔 1976

 ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクションで、「南 桂子 銅版画展-静かな王国」が8月6日まで開催されている。

 南(1911〜2004)は富山県高岡生まれ。幼少の頃から絵を描き、戦後には東京に出て団体展に油彩画を出展するなど油彩画家として活動した。パリに渡ると、版画家フリードランデルの版画研究所で本格的に銅版画を学び、以後、活動の場を版画に移し、国際的に活躍する。少女・鳥・樹木などを題材にした叙情的で繊細な「銅版詩」を描く作家として知られ、メルヘン的な趣をたたえた作品は、ユニセフの発行物にも採用された。

 本展では、南による約45点、浜口陽三による約10点の銅版画が展示されている。

会期:2023年5月27日~8月6日
会場:ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション
住所:東京都中央区日本橋蛎殻町1-35-7
電話番号:03-3665-0251 
開館時間:11:00~17:00 (土日祝は10:00〜) 
休館日:月 
料金:大人 600円 / 大学・高校生 400円 / 中学生以下無料

「記録 / 記憶」をテーマとした新シリーズが公開。エキソニモ「On Memory」(WAITINGROOM)

©︎exonemo, courtesy of the artist and WAITINGROOM

 アートユニット・エキソニモの個展「On Memory」がWAITINGROOMで2年ぶりに開催中だ。

 エキソニモは、千房けん輔と赤岩やえにより1996年に結成。当時普及し始めたばかりであったインターネット上での作品発表を皮切りに、パフォーマンスやイベントオーガナイズなども行い、独自のユーモアをもってインターネットと現実を軽やかに行き来するような様々な活動を続けてきた。

 本展では「記録 / 記憶」をテーマとした新シリーズが中心に紹介される。あらゆる情報をデジタルデータとして記録することができ、ブロックチェーン技術の登場によりさらにその永続性が高まったとされている現代において、人間の記憶を必須の条件として成立する本シリーズ。それは、デジタルデータや美術作品の永続性、その儚さを、エキソニモ独自のユーモアをもって浮き彫りにする試みとなっている。

会期:2023年7月6日~8月6日
会場:WAITINGROOM
住所:東京都文京区水道2-14-2 1F
電話番号:03-6304-1877
開館時間:12:00~19:00 
休館日:月、火、祝 
料金:無料

「視覚的耽溺のモデル」としての絵画群。ローレン・クイン「Salon Real」(BLUM & POE)

ローレン・クイン The Welling Up 2023

 ローレン・クインの個展「Salon Real」は8月10日までBLUM & POEで開催されている。

クインは、イェール大学芸術学部にて修士号、シカゴ美術 館附属美術大学 (イリノイ州) で学士号を取得、ロサンゼルスを拠点に活動するアーティストだ。

 本展では、美術史からシンボル、形態、媒体、ジェスチャーを拾い集め、抜き取り、重ねて制作された絵画作品を紹介。「視覚的耽溺のモデル」として自認するクインの絵画作品群は、未処理の視覚的文化の目録のように、イメージ、 様式、色彩が再発明され、重ね合わされ、統合されることで、驚異的効果を生み出している。

会期:2023年7月5日~8月10日
会場:BLUM & POE
住所:東京都渋谷区神宮前1-14-34 原宿神宮の森5F
電話番号:03-3475-1631 
開館時間:12:00~18:00
休館日:日、月、祝 
料金:無料

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モネ 睡蓮のとき

2024.10.04 - 2025.02.10
国立西洋美術館
上野 - 日暮里 - 秋葉原|東京