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吉原治良

Jiro Yoshihara

 吉原治良は1905年大阪府生まれ。戦後関西を代表する芸術運動「具体美術協会」の創始者。中学生の頃から独学で絵を描くが、家業を継ぐために一時断念。しかし画家への夢を断たずに28年に大阪の朝日会館で魚を描いた作品のみで構成された個展を開催、注目を集める。自信を得て藤田嗣治を訪問するが、「他の画家の影響がありすぎる」と酷評され、のちに吉原が繰り返し述べることとなる「人のまねはするな」という具体のモットーが生まれる契機となる。30年代、家業と並行し画業を続けながら評価を得て、前衛画家としての地位を確立。戦後の抽象美術の隆盛のなか、54年に自身が代表となって阪神在住の若手作家17名で「具体美術協会」を結成。展覧会を定期開催するほか、機関紙『具体』を創刊するなど精力的に活動した。

 フランス人美術批評家で「アンフォルメル」の提唱者であるミシェル・タピエとも交流し、タピエの力添えによって具体は国際展にも参加、欧米からも注目される。吉原自身は初期こそシュルレアリスムの影響が見られたが、のちに荒々しい筆致の抽象画に変化。油絵具が大胆に隆起したマチエールが特徴となる作品を経て、筆跡がわからないほど丁寧に描かれた円を多く描いた。72年没。