「公募展のふるさと」とも称される東京都美術館の歴史を継承するため、公募展を舞台に活躍する作家たちを毎年異なるテーマで紹介してきた展覧会シリーズ「上野アーティストプロジェクト」。その第5弾「Everyday Life : わたしは生まれなおしている」が、11月17日~2022年1月6日に開催される。
本展では「Everyday Life」をテーマに、戦前・戦後の美術団体で活躍した物故作家3名と、現役作家3名を3章構成で紹介。それぞれの作品から「日々生きること」を問い直す。
第1章は「皮膚にふれる」と題して、身近にある「皮膚におなじみの」物体と向き合い戦前から制作を続けた桂ゆき、津軽こぎん刺しを独学で身につけ、その伝統模様や運針規則を厳格に守りながら表現の新たな可能性を追い求めている貴田洋子の作品を展示。
第2章「土地によりそう」では、戦後の女性写真家の草分けとして活躍した常盤とよ子と、ガラスの公募展や国際コンクールで評価を確立した小曽川瑠那を紹介。生涯を横浜で暮らしながら女性たちの日常をとらえた常磐の写真と、戦争や災害などの記憶をガラスにとどめようとする小曽川の新作インスタレーションを並置する。
そして第3章「記憶にのこす」では、70歳を過ぎた頃に絵筆をとり、自身が暮らした山村の風景や動植物をあざやかに描いた丸木スマと、一貫して記憶をテーマに版画の制作を続けている川村紗耶佳の作品を展覧。かけがえのない生活の記憶と、そこから生まれる「かたち」の関係を見ることができるだろう。
新作や初公開作品を含む現役作家3名は、本展がまとまった点数を美術館で紹介する初の機会となる。また、コラージュから写真、ガラス、木版画、クレヨンと水彩、水墨など、作家たちが素材や技法に込めた思いと表現の追求にも注目したい。