東京都美術館で「ゴッホ展──響きあう魂 ヘレーネとフィンセント」が開催される。会期は2021年9月18日〜12月12日。
同展では、20世紀初頭にフィンセント・ファン・ゴッホに魅了され、世界最大の個人収集家となったヘレーネ・クレラー=ミュラー(1869〜1939)のコレクションに焦点を当てる。ヘレーネは、ゴッホがまだ評価の途上にあった1908年からのおよそ20年間で、鉄鉱業と海運業で財をなした夫アントンとともに約90点の絵画と180点を超える素描・版画を収集。宗教的ともいえるゴッホの芸術にヘレーネは深い精神性を見出し、心の拠りどころとした。
ヘレーネはゴッホの絵がもらたす感動を多くの人々と分かちあうことに尽力。1913年にはコレクションの公開を始め、1920年代からはオランダ国外の展覧会にも多数の作品を貸し出すようになった。実際に作品を鑑賞する機会が限られていた時代、質の高い作品群を惜しみなく公開したヘレーネの取り組みは、ゴッホの評価形成にきわめて重要な役割を果たす。
同展では、ヘレーネが初代館長を務めたクレラー=ミュラー美術館のコレクションから、ゴッホの絵画28点と素描20点を展示。画家を志したころから繰り返し描いた素描の数々や、新印象派の影響を色濃く見せるパリ時代の《レストランの内部》(1887)、黄と青の対照がまばゆいアルル時代の《種まく人》(1888)などを展示。また、糸杉を描いたサン=レミ時代の《夜のプロヴァンスの田舎道》(1890)も16年ぶりに来日し、ゴッホの初期から晩年までの画業をたどる。
加えて、ヘレーネの関心や収集傾向を明らかにするために、ミレー、ルノワール、スーラ、ルドン、モンドリアンらの作品20点もあわせて展示。ヘレーネの類まれなコレクションを紹介する。
さらに、ゴッホの弟テオとその妻ヨハンナが引き継いだコレクションを核とするファン・ ゴッホ美術館から、《黄色い家(通り)》(1888)を含む絵画4点も展示。画家の没後すぐ、オランダ国内外で展示された作品を紹介しながら、20世紀初頭からファン・ゴッホの人気と評価が飛躍的に高まっていった背景にも注目する展覧会となる。