「ぼくら」は、2018年に活動を開始した大川原暢人、川又健士、迫竜樹、鷲尾怜の4名からなるアーティストグループだ。19年には、京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAで初の個展を開催。同展では、京都に活動拠点を持つ大川原と鷲尾、東京を拠点とする川又と迫の2組が、往復書簡によって互いに指示を出し合う即興的なパフォーマンスや制作の記録の展示に加えて、実際の展示空間でも代わる代わる指示を出し合いながら制作し、展覧会としてインストールしていくまでを見せた。
その制作態度として、「ぼくら」はYouTuberを参照(自称)し、制作プロセスを映像に収めつつ、友人同士の気兼ねない会話や雰囲気を保ちながらそれらすべてを展示する。リレーショナルアートの要素を含むこの作風を、YouTuber的な手つきで解体し再構成するような「ぼくら」のプロジェクトには、今日において制作を続けることとは何か、なぜ我々は制作を続けるのかなどのきわめて根源的な問いが込められている。
そんな「ぼくら」の個展「ぼくらとみんなは生きている 10 ~豚の旅ともいいきれない~」が、東京の四谷未確認スタジオで開催されている。本展では、京都と東京の2都市の間の流通によって結ばれていた2組が合流し、ひとつの共同体となって「流通」を遡る卒業旅行の内容を公開。
旅は展示空間で豚肉を調理し、食すところから始まり、実際にその豚の産地まで遡る。旅のなかで「ぼくら」は、スタート時にキュレーターから渡された「旅のしおり」にしたがって様々な取り組みを行い、その過程や結果として持ち帰ってきたものを展覧会として立ち上げている。
今回のプロジェクトは、旅行を通したリレーショナルアートにおけるサイトスペシフィックな展開のシミュレーションであり、学生生活というモラトリアムの終焉を描くリアリティショーであり、ひとつの共同体が他者と出会い変容していく物語でもある。