イタリア現代陶芸の巨匠として知られるニーノ・カルーソ(1928~2017)。その没後世界初となる回顧展「記憶と空間の造形 イタリア現代陶芸の巨匠 ニーノ・カルーソ」が、京都国立近代美術館で開催される。会期は2020年1月4日~2月16日。
カルーソは神話性・象徴性をテーマのひとつとして、古代と現代を結ぶ空間の構築を目指したアーティスト。滋賀県立陶芸の森の野外モニュメント《風と星》(1991)のデザインを手がけたほか、岐阜県で開催される「国際陶磁器展美濃」で審査員を歴任するなど、カルーソと日本の関わりは深いものがある。
カルーソは1950年代中頃に陶芸家としての活動をスタート。60年代中頃までは紐づくりで成形し、人物や生物を描いた絵付けやざらついた質感の釉薬を特徴とするシリーズ「アルカイック」を制作。また、50年代末から60年代中頃にかけては鉄による彫刻作品を意欲的に手がけ、64年にはマルケ州ペザロに自身初の巨大な野外モニュメント《抵抗の碑》を制作した。こうした実践からは、カルーソが陶磁を中心としながら、鉄やセメントなど必要な素材を必要に応じて使いこなしていたことがうかがえる。
64年から65年には、発泡スチロールを電熱線で複数のパーツにカットしたものを原型として鋳込み技法で制作を行うようになる。カルーソはこれをさらに応用し、雄型・雌型を上下左右に組み合わせることで複雑な空間を構成。地中海地方の神話や風土、建築物に着想を得た彫刻・壁面作品を制作するほか、多くの公共建築を彩った。
本展ではカルーソの仕事の変遷を、92点の代表作やデザインワーク、スケッチなどの資料を通じて紹介。技術、素材、アイデア、記憶、空間が有機的に結びついた、初期から晩年にいたるカルーソの造形世界を回顧する。