1930年代~60年代の名作椅子から建築作品までを一挙に公開する「モダンデザインが結ぶ暮らしの夢」展が、パナソニック汐留美術館で開催される。会期は2020年1月11日~3月22日。
本展の起点となるのは、ドイツの建築家ブルーノ・タウト(1880~1938)。タウトはドイツの政治情勢を憂慮し、1933年に来日。トルコに発つまでの3年半、仙台や群馬で工芸のデザイン指導と執筆活動を行い、日本の知識層に大きな影響を与えた。第1章では、高崎の文化のパトロンであった井上房一郎が銀座と軽井沢に開いた家具工芸店「ミラテス」で扱ったタウトのデザインによる生活用品や、来日中に竣工した「旧日向別邸」を紹介する。
2章では、井上と深い親交を持ったもう一組の建築家、アントニン&ノエミ・レーモンドの活動にフォーカスする。ふたりはフランク・ロイド・ライトの助手として19年から日本に在住。日本の伝統建築の要素も取り入れた「レーモンドスタイル」と言われる木造住宅作品は人々を魅了した。今回は「笄町自邸と井上房一郎邸」「新スタジオ」といった代表作から、手書きの図面や家具を多数展示する。
続く3章では、タウトに家具デザインの原点を学び、戦後は日本の現代の生活と工業・手工から生まれるデザインのあり方を考え「ジャパニーズ・モダン」を提唱した剣持勇の家具のデザインから、建築家と協働しアートを取り入れた後年の大規模プロジェクトまでを紹介する。
4章では、34年からレーモンド建築事務所に勤めたジョージ・ナカシマの家具づくりを紹介。彫刻的で画期的なデザインが特徴の《コノイドチェア》や、64年から彫刻家や職人たちが結成した高松の「讃岐民具連」に参加し制作した「ミングレン」シリーズを展示する。そして5章では、彫刻から舞台、庭園、家具のデザインと幅広く作品を残したイサム・ノグチの、50年代前半の制作活動を展観。岐阜提灯を照明彫刻へと発展させた「あかり」シリーズをはじめ、暮らしと関わる芸術として彫刻をとらえ直した実践を見ることができる。
椅子や照明器具といった新たな生活用品を日本の生活様式になじませるべく、様々なデザインを模索した日本の工芸関係者たち。そしてその先駆者たちの眼差しは、タウトやレーモンドが日本建築とその意匠に近代性を見出した眼差しと重なり合うものだった。本展では、彼らの交流と作品がどのように育ち受け継がれたのか、また人々の暮らしと価値観にどのような影響を与えたのかを、多彩な資料約160点から検証する。