東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHTで、「マル秘展 めったに見られないデザイナー達の原画」がスタートした。
本展は「日本デザインコミッティー」に所属する幅広い世代のメンバーたちがデザインの過程で生み出してきたスケッチや図面、模型の数々を紹介するもの。ハードウェアやソフトウェア、インタラクティブ・アートなど多岐にわたって活動する「Takram」のデザインエンジニア・田川欣哉がディレクターを務める。
「日本デザインコミッティー」は1953年に設立され、これまで銀座の百貨店・松屋との関係のなかで日本のデザインに貢献してきた。各分野を代表するデザイナー、建築家、評論家が自主的に参加し、現在は40代から90代まで26名のメンバーで構成。会場入口では、商品のセレクト、企画展の開催、ギャラリーの運営という「日本デザインコミッティー」の軸となる3つの活動を、歴代のポスター・DMや映像で紹介する。
続く部屋では3つの壁面を使って、メンバーがドローイングする様子を撮影した映像「原画が生まれるところ」をプロジェクション。その手前には、スケッチの実物や筆記用具なども展示されている。
そして奥の展示室に広がるのが、原画の展示だ。ひとりひとつのケースにはメモやスケッチ、道具、製品のプロトタイプが収められ、まるで実際にデザイナーの机を見ているような展示となっている。会場には「原画展示の見方」として、6つのガイドが掲示。①分野ごとの方法の違いを見る、②デザイナーごとの方法の違いを見る、③筆記用具や道具を見る、④デザインの質の変化を見る、⑤デザイナーの考え方を知る、⑥原画を観察してスケッチしてみる。これらをきっかけに、それぞれの「原画」を見てみてはいかがだろうか。
グラフィックデザイナーの原研哉は、自身が企画した展覧会における展示台の配置や書籍に加え、東京オリンピックのエンブレムや本の表紙、ポスターなど、その思考の流れがわかる詳細なスケッチの数々を展示。21_21 DESIGN SIGHTの館長を務める佐藤卓のゾーンでは、普段使っている道具や手帳とあわせてロゴやシンボルマークのスケッチを見ることができる。
また建築家からは、隈研吾や北川原温らが参加。隈は現在建設が進む高輪ゲートウェイ駅のスケッチや多数のメモ書き、そして軽くて柔らかいものに構造的な強度を与える、もしくは山折り谷折りの連続で表面積を増やした折り紙によるスタディを展示。詩や音楽をモチーフとした設計で知られる北川原のゾーンでは、オブジェクトを透明なケースの空中に吊った個性的な模型を紹介する。
加えて、会場の照明も担当した照明デザイナー・面出薫による「東京駅丸の内駅舎ライトアッププロジェクト 2012」や、テキスタイルデザイナー・須藤玲子による糸やパターンの試作、そして熱収縮布や水溶性の布といった素材の研究など、多様なジャンルにおけるデザインの試行錯誤にも注目したい。
そのほかにも本展には、深澤直人、平野敬子、伊藤隆道、柏木博、川上元美、喜多俊之、小泉誠、黒川雅之、松本哲夫、松永真、三谷龍二、永井一史、永井一正、内藤廣、新見隆、柴田文江、鈴木康広、田川欣哉、田中俊行、山中俊治が参加。会期中には、メンバーへのインタビューのポッドキャスト配信やトークイベントなども開催されるほか、館内ではデザイナーたちによる多彩な椅子に実際に座ることもできる。