私たちにとっての「ファッション」とは? 京都国立近代美術館で「ドレス・コード?──着る人たちのゲーム」展が開幕
18世紀の宮廷服や20世紀初頭の紳士服、ストリートカルチャーを反映した現代の服まで、京都服飾文化研究財団(KCI)のコレクション、美術作品、マンガ、映像、インスタレーションなど約300点が集まる展覧会「ドレス・コード?──着る人たちのゲーム」が京都国立近代美術館で開幕した。
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毎日服を選び、着ること。この行為の裏には「見る・見られる」への意識、そして時代や地域、社会階層の文化や慣習と結びつくことで生じる、暗黙の「ドレス・コード」が存在している。京都国立近代美術館で開幕した「ドレス・コード?──着る人たちのゲーム」展は、そうした服装のコードをとりまく私たちの実践、着る人・見る人の関係性、さらには衣服を通じた私たちと社会のあり方を問い直そうとするものだ。
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会場に並ぶのは、服飾に関する文献や資料を体系的に収集・保存する京都服飾文化研究財団(KCI)のコレクションを中心とした、衣服、美術作品、インスタレーションなど約300点。それらを13のキーワードで分類し、私たちの「ドレス・コード」を読み解いていく。
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「言葉と作品のコンビネーションは、見る人によってそれぞれ違う受け取り方ができる。謎解きのようなかたちでゲームのように展覧会を見てほしい」と話すのは、京都国立近代美術館学芸員の牧口千夏。その「言葉」とは、「裸で外を歩いてはいけない?」「高貴なふるまいをしなければならない?」「組織のルールを守らなければならない?」といった会場を区切る13のキーワードだ。鑑賞者は、こうした疑問符と展示作品を照らし合わせながら、着ることの意味をおのずと考察していくこととなる。
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例えば、「組織のルールを守らなければならない?」では、社会的属性を示す「型」としてのユニフォームに着目、様々なスーツや「学園モノ」のポスターが並ぶ。ここでは、没個性的なファッションとして否定的にとらえることもあるこれらの衣服に仕掛けられた逸脱や、各時代の表象を感じ取ってほしい。
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京都服飾文化研究財団キュレーターの石関亮は、本展に通底するテーマを「衣服がもとの機能から離れていくことで、様々な役割に変換されていく」ことだと話す。その最たる例は、4番目のセクション「生き残りをかけて闘わなければならない?」に並ぶミリタリー調の衣服だろう。20世紀前半の2度の戦争のなかで誕生したとされるトレンチコートと迷彩服にフォーカスしたこのセクションでは、現代的な意匠が施されたトレンチコートや迷彩柄があしらわれた着物などが登場する。
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いっぽう、美術とファッションの接続にせまるのは、6番目のセクション「教養は身につけなければならない?」だ。
ここに並ぶのは、ジェフ・クーンズとルイ・ヴィトンがコラボレーションした「マスターズ」コレクション、モンドリアンの画風が取り入れられたイヴ・サンローランのドレス、そしてユニクロのTシャツのモチーフとして選ばれたアンディ・ウォーホルの《キャンベル・スープⅠ》など。アートを身につけるという欲望はどこから来ているのか? そんな疑問符も浮かび上がるセクションだ。
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会場の雰囲気が「ストリート」へと舵を切るのは、8番目のセクション「他人の眼を気にしなければならない?」から。1992年頃より25年以上にわたって、50都市以上の人々を撮り続けてきたアーティスト、ハンス・エイケルブームの写真で幕を開けるこのセクション。類型学的に分類された人々が並ぶ3面の壁それ自体が、さながら図鑑のようにも見えてくる。
対して、元田敬三による日本の「ストリート」のヤンキーカルチャー、そして都築響一による過激なスタイルを生み出す若者たちの姿など、ハイファッション・サブカルチャーなどがすべて等価で交換可能となった現代のポートレイト。これらは、エイケルブームと同様のストリートスナップでありながらも、まったく異質な印象を残している。
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展覧会のクライマックスを飾るのは、チェルフィッチュによる「見る」「見られる」を強烈に意識させるインスタレーション作品《The Fiction Over the Curtains》や、マームとジプシーの新作《ひびの、A to Z》。26名の人物が登場する《ひびの、A to Z》では、人々がそれぞれにどんな人格を持ち、どのような服を選ぶのか、chapter1〜3を通してゲーム感覚で見ることができる。
本展を通して、装いの普遍性やその現代的な意味をとらえ直してほしい。
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