昨年パリ・ルーヴル美術館で巨大な彫刻《Throne》を発表し、今年4月から韓国で7年ぶりの個展を開催している日本の彫刻家・名和晃平。その近作および新作を紹介する個展「Recent Works」が、7月19日にペースの香港支店でスタートする。
本展では、今年銀座 蔦屋書店で発表した、《Throne》を小型化したシリーズに加え、「PixCell」「Particle」「Direction」「Moment」などの代表シリーズを展示する。
ハイライトのひとつである「PixCell」シリーズは、オブジェクトの表面を透明な球で覆い、それぞれを「光の殻」に変換することによって作成される作品群。「PixCell」は、デジタルイメージの最小単位を意味する「Pixel(画素)」と生物の最小単位である「Cell(細胞・器)」を融合させた、名和による造語だ。
鹿をモチーフにそれぞれのサイズの「PixCell」を使用して制作した本シリーズの作品は、それらの「細胞」に歪んだレンズの効果を生み出しており、様々な角度から異なる鑑賞体験を得ることができる。また、日本の伝統的な美術では、鹿は古代の賢者の仲間として描かれていることが多いため、本作は縁起の良さも示している。
ダイヤモンドとシリコンの両方の特性を持つ炭化ケイ素粉末を使ってオブジェクトを覆う「Particle」シリーズは、暗い空間で輝き、運動から静止へ、有機から無機への転換を強調するもの。また、平面作品である「Direction」と「Moment」シリーズは、ドットやグリッド、線や円の繰り返しを通し、キャンバスに発生された偶然の現象をとらえ、液体材料の物理的な動きを記録する。
領域を横断して活動するアーティストである名和は、仮想および物理的な空間の認識や、自然と人工性の関係を探求し続けている。単体と全体の因果関係を受け入れ、動的な構造を通して細胞のような部分の相互作用を示す本展をチェックしたい。