ルーヴル美術館を象徴するガラスのピラミッド。ここで、名和晃平が日本人として初めて作品を展示したのが2018年7月のことだ。日仏合同プロジェクト「ジャポニスム 2018」公式企画の一環として、高さは10メートル以上の巨大な立体作品《Throne》が展示された(同館での展示は2月18日まで)。
「Throne」とは「王位」や「玉座」を意味する言葉。曲線と直線が複雑に混ざり合った造形をした同作には小さな玉座がデザインされており、「空位の玉座」という意味がそこには込められている。
その《Throne》のエディション作品を発表する個展「Throne -Louvre Pyramid-」が、東京の銀座 蔦屋書店内「GINZA ATRUIM」で始まった。
会場には《Throne》を小型化した《Throne(g / p_pyramid)》(2019)に加え、2011年の東京都現代美術館での個展「SYNTHESIS」にて発表された彫刻をもとにした《Throne(p / g_boy)》と《Throne(Sic / p_boy)》(ともに2019)が展示。ルーヴル美術館の展示風景とともに鑑賞できる。
ルーヴル美術館での発表から約半年が経ったタイミングでの個展となる今回。名和は《Throne》が多くの人々とのつながりを生み出してきたと語る。「(ルーヴル美術館の)会期中に様々な人たちとの会話を重ね、いろんな反応がありました。実際に都市の中で表現し、いまの時代にコミットすることで、表現が展開されていくということを実感しました」。
なお今回の個展では、2011年以来、じつに8年ぶりとなる作品集『METAMORPHOSIS』(光村推古書院)も発表。同書は上述のルーヴル美術館での展示を含む、国内外での150点以上の作品を収めたもの。特装版である『METAMORPHOSIS COLLECTOR'S EDITION』には、同書のために特別に制作された彫刻シリーズ「Velvet」10種類のマルチプルのなかから1種類が化粧箱に同梱されており、名和の作品世界をより堪能できる仕様となっている。
名和は今回の作品集について、「いままでのことを振り返る、いい機会になった」としながら、「これからの展望が少し見えてきました。複数のジャンルにまたがるプロジェクトもやっていきたいですが、その中心にはいつも彫刻があります」と語っている。