森栄喜は1976年石川県生まれの写真家。近年、同性婚や多様化する家族形態、ジェンダーなどをテーマに、親しい友人やその家族のポートレイト、そして自分自身もカメラの前に立ち、被写体とともにフィクショナルな状況を演出するパフォーマンス作品や記録映像作品などを発表してきた。
身近な共同体を社会形態の縮図として、映像やパフォーマンス、文章、詩、など多種多様なメディアを横断しながら視覚的に訴えかけてきた森。現在、東京・新宿のKEN NAKAHASHIで開催中の個展「Letter to My Son」で、森は現代における「家族」の枠組みには当てはまらない人々の間に存在する「鎖のような強いつながり」を示している。
本展を構成するのは、森が初めて撮影・編集のすべてを手がけた映像作品《Letter to My Son》と、便箋や封筒と写真を組み合わせた7つの作品「Letter to My Son(#1~#7)」。
いずれも、森がニューヨーク留学時代に親しくしていたある人物との思い出に基づいたものであり、9.11前のニューヨークと現在の東京を舞台に、祖父、父、息子のように世代の異なる3人の思いが錯綜しながらも重なり合い、その強固なつながりが時間や場所を超えて続いていく様子が描かれている。