「人間はどこに向かって行くのか」。この普遍的な問いを投げかける作品を集めたコレクション展「アジアの風景」が、金沢21世紀美術館で開催される。
アジアにおける様々な表現は、その土地の歴史や文化と結びつきながら、伝統とグローバル化のあいだで揺れ動いている。本展では、その渦中でアジアに拠点を置きながら変容する社会を見続け、世界を照射する作品をセレクトして紹介する。
会期前半は、スゥ・ドーホーの《家の中の家ー1/11スケールー原型》(展示期間:11月3日ー 12月24日)を展示する。過去に自分が住んだ家を、原寸大で再現した布の彫刻で知られるスゥ。今回展示されるのは、自身がアメリカに留学した1/11スケールの家のなかに、幼少期に韓国で過ごした家の間取りが埋め込まれている作品だ。
また、シンガポール出身のザイ・クーニンは、初代のマレー王に関する研究と制作から成るプロジェクトの集大成を展示する。このプロジェクトは、マレー族がイスラム化する前の文化を明らかにするとともに、マレーに出自を持つ作家自身のアイデンティティの探索であるとも言える。
そのほかにも、自動車や家電を用いたサウンド・スカルプチャー《プライウッド新地》で動く都市をつくる宇治野宗輝、伝統的な琉球着にジュゴンや軍事用ドローン、沖縄の人々といったモチーフを染めあげた《遥か遠くからの未来より》を提示する照屋勇賢などが参加。
本展では上記4名の作家に加え、時期をずらしてチェン・ウェイ(展示期間:12月26日ー 2019年 3月10日)、小西紀行(展示期間:2019年 3月12日ー5月6日 ※予定)および笹本晃、ジュン・グエン=ハツシバの作品が展示される。
なお、小特集展示として「粟津潔、マクリヒロゲル5 粟津潔のブック・イラストレーション」が同時開催。同展はグラフィック・デザイナー、粟津潔の調査展示を行う「マクリヒロゲル」のシリーズ最終回として、本の挿絵と子どもに向けたイラストレーションにスポットを当てる内容となっている。