新聞を作品によってラッピングするという珍しい試みを、沖縄タイムスが行った。
同紙は1948年創刊。戦争によって壊滅的な被害を受けた沖縄の復興には、文化が礎になるという信念のもと、新聞発行とともに、文化事業にも力を入れており、創刊翌年の49年に立ち上げた沖縄最大の総合美術展「沖展」(沖縄美術展覧会)は今年で第70回を数えている。
そんなアートとも関わりの深い沖縄タイムスが、創刊70年を機に、沖縄出身の現代美術家・照屋勇賢とコラボレーションしたのが、今回のラッピングプロジェクトだ。
1973年沖縄県生まれの照屋は、トイレットペーパーの芯やファストフード店の紙袋、あるいは高級ファッションブランドのショッピングバッグを素材に、そこから木々が立ち上がる立体作品などを制作。また、沖縄の伝統工芸の紅型の技法で基地や環境をモチーフにした作品も手がけ、その作品はニュ ーヨーク近代美術館やグッゲンハイム美術館、森美術館、金沢21世紀美術館などに所蔵されている。
今回のラッピングプロジェクトは、17年12月に沖縄で開かれた照屋の個展を同紙が取材した際に、照屋から提案がありスタート。新聞をラッピングしたのイメージは、沖縄の豊かな自然を表す海と森。これは照屋が描いた水彩画で、この原画をスキャンし、新聞に印刷された。
照屋はこの作品について、「海と森はあなた/私を映す。私たちが自然と1対1で、何ができるのか、何をしてきたのかを確認する鏡でもある」とコメントする。
いっぽう同紙は、「美術館やパブリックの中で作品と出会うのではなく、自宅のポストに作品が届くという行為そのものが斬新で、アートの未来も新聞の未来も切り拓くのではないかと考えました」と今回のプロジェクトの意義について語る。
同様の試みが継続されるかどうかは未定だが、「各部局で、これまでにない新しい試みを実現していこうと、さまざまな取り組みを展開している」という。