リナ・バネルジーの表現に隠された多層性。寺尾紗穂&野村由芽が見つめた対話と抵抗のグラデーション【2/2ページ】

「対話」と「抵抗」。ハレーションを恐れず多様性と向き合う

寺尾 水彩による平面作品について、バネルジー自身が「水と対話すると同時に水に抵抗することです」とコメントしていました。

野村 文化が交じり合うなかで、対話だけでも抵抗だけでもなく、その両方をグラデーションのように実践していく姿勢が面白いと感じました。

リナ・バネルジーの絵画作品群(2020-26) Courtesy of the artist and Perrotin Photo by Jérémie Souteyrat / Louis Vuitton

寺尾 水はつねに変化する流動的なものですよね。異文化が混じり合うなかで、自分のルーツの何が変わり、何が変わらないのか。水彩画という画法との向き合い方自体が、移住していく人々のあり方と重なっているように感じました。

野村 多様であることって、実際にはハレーション(摩擦)が起きるし、すごく大変なことですよね。「多様性」を謳うだけでなく、その実態の大変さにも喜びにも粘り強く向き合う日々の胆力が大切なのだと思います。日本でもいま、外国人の受け入れを厳しく制限・管理する政策や、ビザ取得のための要件引き上げなどが議論されています。こうした複雑な状況に、私たちはどう向き合っていけばいいと思われますか?

寺尾 「多様性アレルギー」のような排外的な反応も多いですが、現実として、社会は多様です。誤解や偏見、ハレーションを乗り越えていくだけの良さやメリットがある、ということを発信していくしかない。いまも「移民・難民フェス」などありますが、きちんと進めるためには、「公」が率先して、お祭りやイベントなどの場で多様な存在同士が触れ合う機会を増やしていくことが大事だと感じています。

野村 リナ・バネルジーというアーティストの作品から、自分なりに色々なメッセージを読み解いていくのは本当に刺激的で、とても面白いと感じました。寺尾さんの視点を通して作品を見ることで、文化の複雑さや、自分がこうした状況のなかでどのように生きていくのか、ということについて深く考えさせられました。

編集部

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