なぜ「TOHAKU OPEN PARK PROJECT」は必要なのか
──2025年には、本館前庭を芝生広場へと改修し、誰もが快適に過ごせる憩いの場へと生まれ変わらせるという「TOHAKU OPEN PARK PROJECT」を発表しました。これはその思想を具現化するものという位置付けですか。
竹之内 そうです。「TOHAKU OPEN PARK PROJECT」は「2038ビジョン」の実践のひとつです。正門から本館へ向かう空間は、来館者が最初に目にする場所です。そこに足を踏み入れた瞬間に、「今日はどんな体験が待っているのだろう」と期待感を抱いていただきたい。そうした思いからスタートしました。これは設備の改修など、直近の課題解決だけではなく、「これから100年先の東博をどういう場所にしたいのか」を具現化するためのプロジェクトと位置付けています。
──いっぽうで、「東博ほど来館者が多い館に、そこまでの改革が必要なのか」という見方もあります。
竹之内 たしかに現在、東博には多くの方に来ていただいています。ただ、コロナ禍前を振り返ると、外国人来館者は全体の約2割程度で、国内来館者の中心は比較的年齢層の高い方々に支えられてきました。もちろんその方々は非常に大切な存在です。しかし今後、日本は人口減少社会に入っていきます。若い世代の文化施設離れも指摘されています。趣味や娯楽の選択肢も増えています。そうした状況のなかで、これまでと同じ来館者層だけに支えられる博物館であり続けることは難しいでしょう。だからこそ、学生や若い社会人、子供連れの方、障害のある方、海外からの旅行者など、より多様な人々に開かれた存在になる必要があります。「TOHAKU OPEN PARK PROJECT」は、そのための入り口であり、来館者との新しい接点をつくる試みでもあります。
──「TOHAKU OPEN PARK PROJECT」に対しては、「歴史的景観を損ねるのではないか」「前庭が常設のイベント会場になるのでは」など、大きな反響がありました。
竹之内 これほど多くのご意見をいただいた経験は、東博にとってもあまりありませんでした。すべてのご意見に目を通しました。もちろん賛否様々なご意見がありました。しかし何より感じたのは、多くの方が東京国立博物館を大切な場所だと思ってくださっているということです。それは当館にとって大きな財産でした。今回の議論を通じて、東博がただの文化施設ではなく、多くの人の記憶や経験と結びついた特別な場所であることを改めて実感しました。
──国立館としての責任も感じられたのではないでしょうか。
竹之内 そうですね。「国立」という言葉の重みは非常に大きいと思います。日本人にとっても、海外から来た方にとっても、東博は「日本を代表する博物館」だと認識されています。だからこそ、空間のあり方ひとつ取っても強い関心が寄せられる。その期待に応えながら、文化財を守るだけでなく、より使いやすく開かれた場所へと進化していかなければなりません。




















