ひっ迫する博物館の収蔵庫、現状と課題は?

法政大学資格課程が、5月25日にシンポジウム「博物館の収蔵コレクションの現状と課題を考える」を同大にて開催。博物館収蔵庫の現状と課題について議論が交わされた。

文・撮影=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)

シンポジウムの様子

収蔵庫の使用率9割以上が約半数

 ミュージアムの根幹機能のひとつである収集。その役割を果たすうえで不可欠なのが、作品や資料を保管する収蔵庫だ。しかしこの収蔵庫は、多くのミュージアムにおいて問題を抱えている。例えば、公益財団法人日本博物館協会の「日本の博物館総合調査報告書」(令和元年度版)では、収蔵庫が資料によってどのくらいの割合を占めているかという調査に対し、「9割以上(ほぼ、満杯の状態)」という館が全体の33.9パーセント、「収蔵庫に入りきらない資料がある」という館も23.3パーセントにおよぶ。また、27.2パーセントの館が外部に収蔵場所を設けており、設けていないが必要としているという館も31.9パーセントに達している。

 また、文部科学省科学研究費基盤研究C「博物館収蔵資料の保管と活用に向けた調査研究」(令和4年度~7年度)として行われた公立博物館アンケート調査では、回答のあった317館(調査対象は500館)のうち41.6パーセントが収蔵庫使用率9割以上、33.3パーセントが入りきらない資料があると回答。また館内収蔵施設を有している場合についても、約半数が使用率9割以上と回答するなど、収蔵庫のひっ迫具合がいかに喫緊の課題であるかがわかる。

 こうした課題は国内に限ったことではなく、ICOMが発表した調査報告書「Museum Storage around the world」の2024年版(調査対象は世界1132館)によると、ほとんどすべての博物館が保管施設の整備が困難であり、約3分の1が収蔵スペース不足の状態。設立10年未満の施設は保管能力があるいっぽうで、古い施設ほど保管に関する問題を多く抱えているという。

ICOM「Museum Storage around the world」(2024年版)より、博物館の設立年代ごとの収蔵庫のキャパシティ
ICOM「Museum Storage around the world」(2024年版)より、地域ごとの博物館の収蔵庫のキャパシティ
ICOM「Museum Storage around the world」(2024年版)より、オフサイトの収蔵庫のキャパシティ

収蔵庫は放置できない社会問題

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