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「100年先を見据えた東博の覚悟」。新副館長が語る、東京国立博物館が変わろうとする理由【2/4ページ】

100年後の東博を見据えた構想

──先ほど言及された「東京国立博物館2038ビジョン」(以下、「2038ビジョン」)とはどういったものでしょうか。

竹之内 2038年というのは、現在の本館の開館から100周年を迎える年です。その節目に向けて、東博がどのような博物館を目指すのかを示したものが「2038ビジョン」です。ただ、これはただの周年計画ではありません。2038年という年をひとつの目標にはしていますが、その先の100年も見据えています。日本の博物館がこれからどうあるべきか、東博がどういう役割を果たしていくべきかという長期的なビジョンでもあるのです。

東京国立博物館本館 写真提供:東京国立博物館
東京国立博物館本館を象徴する大階段 写真提供:東京国立博物館

 東博では過去にも「総合文化展100万人プロジェクト」や「東博新時代プラン」など、職員主体で将来像を描く取り組みを続けてきました。予算がない、人が足りない、といった理由で実現できなかった課題も含め、一度すべてを俎上に載せて議論し、「どうすればできるのか」を考えてきた歴史があります。「2038ビジョン」はその最新のバージョンといえるものです。

──その核心にある考え方とはなんでしょうか。

竹之内 ビジョンには4つの柱がありますが、代表的でわかりやすい柱は2つです。ひとつは「日本と世界をつなげる博物館」。もうひとつは「みんなが来たくなる博物館」です。

 東博は150年以上の歴史のなかで、多くの海外機関と展覧会や研究交流を行ってきました。しかし、それらは必ずしも継続的な関係として制度化されていたわけではありません。今後は海外のミュージアムと協定を結び、人の交流、作品の交流、情報の交流を継続的に進めていきたいと考えています。

 日本文化を世界に発信することは、たんなる文化の紹介にとどまりません。文化を通じた国際交流や相互理解の促進、いわば文化外交の役割も担えるはずです。東博はそうした拠点になりえると考えています。また、日本文化を海外へ発信することは、同時に日本人自身が自国文化を見つめ直す契機にもなります。海外からの評価や関心を通じて、日本文化の価値を再認識する。その循環を生み出すことも当館の重要な役割だと思っています。

──もうひとつの柱である「みんなが来たくなる博物館」は、近年の東博を象徴するキーワードにも見えます。

竹之内 博物館や美術館には、いまだに「静かにしなければいけない場所」「子供を連れて行きづらい場所」など、敷居が高いイメージがあります。しかし本来、博物館は誰のものかといえば、すべての人のものです。

 もちろん文化財の保存や展示という本来の役割は変わりません。ただ、それと同時に、多様な人々が集まり、学び、過ごし、交流できる共有空間でもあるべきだと思っています。東博では近年、「あそびば☺とーはく!」などの子供向けのプロジェクトや「ファミリースペース」の新設、「東洋館インクルーシブ・プロジェクト」などの取り組みも進めてきました。これらはたんなるサービス拡充ではなく、「博物館は誰のための場所なのか」という問いへの回答でもあります。文化財を守ることと、開かれた場になることは矛盾するとは考えていません。むしろ未来に文化財を継承していくためには、より多くの人に博物館を「自分の場所」だと思ってもらう必要があるのです。

2024年から始まった子供と保護者向けのプロジェクト「あそびば☺とーはく!」の様子 写真提供:東京国立博物館
平成館に新設された、未就学児を連れた来館者向けの休憩スペース「ファミリースペース」、ミキハウスが全面支援している 写真提供:東京国立博物館

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