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文化と経営はいかに両立できるのか。国立新美術館新館長・菅谷富夫が語る、「アートセンター」の未来【3/3ページ】

文化経営を切り離して考える時代ではない

──現在開催中の「生誕100年 森英恵 ヴァイタル・タイプ」(4月15日〜7月6日)のような大型展でも、「なぜ国立新美術館でやるのか」が重要になってきます。

菅谷 そうですね。森英恵さんの展覧会自体は、過去にもありました。でも今回は、ひとりのクリエイターとしての全体像を見せようと考えた。彼女はたんにファッションデザイナーであるだけでなく、戦後日本の視覚文化そのものに影響を与えた存在でした。今回の展覧会では、そうした部分も含めて提示している。つまり、「森英恵とは何者だったのか」を総体として見せようとしているんです。そして、それを可能にするのがこの館の規模です。2000平米級の展示室を持つ美術館は、日本でもそう多くない。この物理的なスケールは国立新美術館の大きな強みです。もちろん、小さな空間でも素晴らしい展覧会はできます。でも、物理的なスケールが必要な展示もある。その意味で、この場所には大きな可能性があると思っています。

──企画とともに、いまの美術館には強い「集客力」も求められます。

菅谷 私は、多くの人に見てもらうことは重要だと思っています。何十万人もの人が見たいと思う展覧会なら、美術館としてやるべきです。それを「ブロックバスターだから駄目だ」と単純に否定する必要はない。もちろん、ただ人を集めればいいわけではなく、「私たちはこれをどう見せたいのか」という視点は必要です。でも、それをきちんと提示できるなら、多くの人に見てもらうことはむしろ大切なことです。

 また、国立新美術館には公募展という大きな役割もあります。年間約80団体が利用し、来場者数は約100万人を数える。そうした人たちが企画展にも足を運び、美術館へ行く習慣をもつきっかけにもなっている。私は、公募展にも大きな意味があると思っています。いろいろなかたちで美術に触れる機会があるべきですし、そのための場として、この「アートセンター」は存在しているのだと思います。

──美術館が「文化」と「経営」の両立をより強く要求される時代ですね。

菅谷 もちろんどちらかいっぽうではなく、両方を考えなければいけない。面白い展覧会でも、採算が取れないことはある。でも、「だからやらない」ではなく、「どうすれば実現できるか」を考えるべきなのです。単年度ですべて黒字にしろというのは難しい。しかし、年間を通して、あるいは複数年でバランスを取ることはできるはずです。もちろん、「人が入る展覧会」だけをやればいいわけではない。私たちが提示したい視点があることが前提です。そのうえで、多くの人に来てもらえるなら理想的です。もし足りなければ、外部から資金を得る方法も考えなければならない。文化と経営を切り離して考える時代ではないと思っています。

──来年、国立新美術館は開館20周年を迎えます。具体的なアクションプランはありますか?

菅谷 20年経つと、いろいろな意味で「当たり前」が固定化してしまう。だから、一度立ち止まって、この館を見直したいと思っています。例えば建築です。黒川紀章によるこの建築は、この館の最大の魅力のひとつです。いまでも建築を撮影しに来る人がいる。でも、本来もっと美しく見せられるはずなのに、張り紙や備品の置き方などで損なわれている部分もある。そうした細部も含めて、もう一度見直したいと思っています。また、20年というのは、建築的にも大規模改修を考えなければならない時期です。ただ修繕するのではなく、この館の長期的なビジョンを踏まえたうえで改修を考えなければいけない。つまり、ハードとソフトの両面で「総点検」が必要な時期にきているのだと思います。そのうえで、美術の新しい見方を発信していきたいと考えています。

編集部