05. パリ・フランス 選・文=草野絵美(アーティスト)
パリを訪れるたびに感じるのは、生活のすぐそばに文化や表現が当然のように存在する、街としての懐の深さです。細部に神が宿るような繊細な美意識を共有している感覚があり、幸運なことに、仕事での滞在を機にこの街の多層的な魅力に触れる機会が多くありました。現在はポンピドゥー・センターが長期改装中ということもあり、エネルギーが各地の私設美術館やギャラリーに分散して、かえって街全体にフレッシュな流動性が生まれているように感じます。
現地で訪れるべき美術館・ギャラリー・エリア
ブルス・ドゥ・コメルス(ピノー・コレクション)
なかでも一番好きな場所は「ブルス・ドゥ・コメルス」です。18世紀の商品取引所という歴史的な建築の内部に、安藤忠雄氏によるミニマルな円筒空間が挿入された構造は圧巻。ひとりのコレクターの情熱が結集した展示は、空間そのものがひとつの巨大なインスタレーションとして機能しています。

パレ・ド・トーキョー&パリ市立近代美術館
また、パレ・ド・トーキョーという現代アートの生々しい実験場を堪能したあと、同じ建物内にあるパリ市立近代美術館へ寄り、ラウル・デュフィの巨大壁画《電気の精》などの近代美術を対比させながら巡るのも、この街ならではの贅沢な時間です。

ペロタン
マレ地区へ足を伸ばせば、歩くだけで楽しい街並みのなかに魅力的な雑貨屋や、歴史的な邸宅を贅沢に使ったペロタン(Perrotin)のようなメガギャラリーが点在しており、世界の最前線の表現を無料という驚くべき身近さで体感することができます。

滞在の楽しみ方
昨今の急激な円安の影響で、海外での滞在にハードルを感じる場面も少なくありません。私はAirbnbを利用して暮らすように滞在し、スーパーで新鮮な食材を調達して自炊を取り入れることで、予算を抑えつつ豊かな生活を維持するようにしています。フランスでは飲食店でのパンの提供が無料となっているため、街角の絶品クレープやレストランのバゲットを賢く楽しむのも手です。重厚な建築と最新のデジタル表現が溶け合うパリの多層的なレイヤーを、ぜひ等身大の視点で楽しんでみてください。
くさの・えみ
1990年東京都生まれ。複数の領域や手法を複合的に用いて制作を行うマルチディシプリナリー・アーティスト。20ヶ国以上で作品を発表。2025年には、世界経済フォーラムのヤング・グローバル・リーダーに選出。過去と現在の対話をレトロフューチャーな美学のもとに可視化することで、現代社会を捉え直す視点を観る者に投げかける。



















