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INTERVIEW - 2017.2.10

ギャラリストの新世代 statements・山根一晃

statements(東京・恵比寿)は、2016年5月にスタートしたプロジェクト・スペースだ。設立者でありディレクターを務めるのは、自身も作家として活動する山根一晃。その他キュレーター、作家ら3名とともに企画・運営を行っている。同所を立ち上げたきっかけ、活動の先に目指す役割について話を聞いた。

壁に飾られているのは、井出賢嗣《a letter》(2010)(左)と青崎伸孝の作品シリーズ「Chocolate Compositions」(2014)からの1点(右) Photo by Chika Takami

種をまく場所

次なるコンセプトを求めて

2016年5月、東京・恵比寿にstatementsはオープンした。同所を運営するのは、アーティストの山根一晃と磯谷博史、キュレーターの兼平彦太郎、ギャラリストでキュレーターの柴田としの4名だ。

「周囲にいる世代の近い人たちによるオルタナティヴ・スペースの活動を見ていて、自分もいつかスペースを持ちたいとぼんやり考えていた。設立するにあたって、他の3名に協力をお願いするかたちで声をかけました」。そう話すのは、設立者の山根一晃だ。山根は美術大学を卒業後、神奈川県の相模原を拠点に現代美術作品を制作。自身が直面する問題と、それらが表立って語られることのない美術界の状況とのギャップを日々感じていたという。

「ポストモダンが終わったと言われて久しいけれど、その次に来るべき大きなコンセプトがまだ十分に語られていないような気がした。それに対して自分でもできることが、もっといろいろあるんじゃないかと考えていたんです」。

オープニング展は、街行く人々が描く地図を集積することで、もう一つの街の姿を浮かび上がらせる青崎伸孝の個展。青崎は、マルセル・デュシャンの代表作を大量生産品で模したオブジェなど、2005年よりニューヨークを拠点に、多彩な作品を手がけてきた。「日本ではあまり紹介されていない、けれど自分たちがいいと思う作家を紹介していこうと思いました」。

2016年9月開催の井出賢嗣、佐藤純也、八木良太「アフター ザ サマータイム」の様子 Photo by Chika Takami

美術史を再認識するために

フーゴ・バル、クルト・シュヴィッタースら20世紀初頭のダダイスムなどを先導した作家の資料と、大木裕之、金氏徹平ら現代の作家の作品を並置した「stir, stir, stir..」展。あるいは、1933年から57年までアメリカに存在した伝説の芸術学校「ブラック・マウンテン・カレッジ」の存在を背景に、作家やキュレーター、評論家が参加したアン・イーストマンと落合多武の企画発案による「トレッドソン・ヴィラ・マウンテンスクール2016」。

statementsが行ってきた企画の特徴の一つに、過去と現在の接合がある。これは、現代の作品が、脈々と受け継がれている美術史の上に成立していること、そして、その美術史を再認識するきっかけを期待してのことだという。

「この場所で取り扱ったテーマや作品をきっかけに、それぞれの作品を長いタイムラインでの位置づけとともに考える契機になればいいと思っています」。こうした考えに共鳴する作家や関係者が集い、展示やイベントを行うことで、結果的に新たな文脈がつくられる。そうした願いの込められた同所は、「ギャラリー」ではなく「プロジェクト・スペース」と名付けられている。

これからのための、ひとつのきっかけ

statementsでは、今年2月にポール・シャリッツ、3月には半田真規、4月にはジェイ・チュン&キュウ・タケキ・マエダの展示を開催し、コンセプトブックの出版を予定。その活動はこれまで以上に多岐にわたる予定だ。そして、こうした展開はあくまで未来を見据えたもの。今は種をまいている期間なのだという。

「statementsの活動は、関わる人たちにとっての一つのきっかけであってほしい。今後の制作や、社会での立ち位置によい影響を与えるなど、長期的に寄与していけるのならば嬉しいです」。

もっと聞きたい!

Q. 影響を受けた作家は?

作家のフェリックス・ゴンザレス=トレスです。アクティビストでもある彼は、制作、社会活動、恋人との親密な時間、すべてが大切で等価だと考えていました。生前出版した書籍には作品のポスターが入っていたり、彼の優しさが感じられる。見つけたらなるべく入手しています(兼平)。

フェリックス・ゴンザレス=トレスの作品集(Art Press、1993年) Photo by Chika Takami

Q. 思い出の一品は?

マルセル・デュシャンが写るポストカードです。中学生のとき、美術館で初めてその作品を見て、衝撃と同時に動揺した記憶があります。冷蔵庫のドアに貼って毎日目にしているこのカードは、生活と地続きに巨匠の存在が感じられる気がして気に入っています(山根)。

Photo by Chika Takami

PROFILE
やまね・かずあき 1982年広島県生まれ。2010年東京造形大学大学院造形研究科造形専攻修了。作家活動と並行して2016年にstatements(東京)を設立。

文=野路千晶
(『美術手帖』2017年2月号「ART NAVI」より)

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