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「芸術家を生涯支える」という発想とは。フランス「芸術家財団」が50年かけて築いた創作のインフラ

芸術家を支えるとは、制作費を助成することだけではない。制作のための時間や場所を整え、芸術家と社会が互いに支え合う環境をいかに育んでいけるのか。創設50周年を迎えたフランスの芸術家財団は、制作助成やアトリエ、現代美術センター、高齢芸術家のための「芸術家の家」をひとつのエコシステムとして運営してきた。その現場を訪ね、芸術家を生涯にわたり支える思想と仕組みの現在地をレポートする。※7月18日24時まで、すべての方に全文お読みいただけます。

文=飯田真実

芸術家財団が所有するノジャン=シュル=マルヌの庭園(2026年6月27日)。約10ヘクタールの広大な敷地に、「芸術家の家」、現代美術センターMABA(Maison d'Art Bernard Anthonioz)、71のアーティスト・アトリエなどが共存する Courtesy of Fondation des Artistes Photo © Vanessa Silvera

フランス「芸術家の家」とは

 パリから電車で十数分。ノジャン=シュル=マルヌの歴史的な邸宅では、入居アーティストによる絵画や彫刻が廊下を彩り、庭園の木陰で来館者らと語り合っている。ここは「国立芸術家の家(Maison nationale des artistes)」(以下「芸術家の家」)(*1)。現在は医療・介護を提供するEHPAD(高齢者介護施設)として運営され、約80名が暮らす。入居者は一般的なEHPADと同様に滞在費を負担するいっぽう、館内では展覧会や各種イベントが開かれ、作品も一般公開されている。

 その始まりは、20世紀前半に活躍した姉妹、画家マドレーヌ・スミス=シャンピオンと写真家ジャンヌ・スミスの遺志にさかのぼる。ふたりは1944年、同地に所有していた邸宅と庭園を「芸術家が晩年を過ごすための場所」として国に遺贈し、翌45年、最初の入居者を迎えた。芸術家を優先しながらも芸術文化に親しむ人々にも門戸を開き、「創作とともに生きる」という理念は現在まで受け継がれている。

 日本では2008年、小林亜希子監督によるドキュメンタリー『残照 フランス・芸術家の家』がNHKで放映され、高齢になっても創作を続ける芸術家たちの姿が紹介された。それから約20年。芸術家の家は若手への制作支援やアトリエ運営、現代美術センター「MABA(Maison d'Art Bernard Anthonioz)」、アーティスト・イン・レジデンスなどとともに、芸術家財団が展開するアーティスト支援活動の一翼を担い、芸術家のキャリアを生涯にわたって支える生態系をかたちづくっている。

庭園側から見た「芸術家の家」の外観 Courtesy of Fondation des Artistes
マドレーヌ・スミス=シャンピオン《自画像》(1920頃)キャンバスに油彩 FNAGP所蔵 画像引用:https://www.fondationdesartistes.fr/evenement/mna/madeleine-smith-champion-la-bienfaitrice/

*1──視覚芸術分野のアーティスト協会「Maison des Artistes(L'association nationale des artistes des arts visuels)」とは別組織。「Maison nationale des artistes」の日本語表記は「芸術家の家」として定着されており、「Maison des Artistes」は「アーティスト協会」と訳し分けられることが多い。また、「Maison nationale des artistes」の「nationale(国立)」は、現在の運営が「国」ではなく「公益認定財団」である芸術家財団のため、日本語では「芸術家の家」として初出以降表記した。

編集部