KAAT EXHIBITION 2025 大小島真木展「あなたの胞衣はどこに埋まっていますか? Where Lies Your Afterbirth?」(KAAT神奈川芸術劇場 9月21日~10月19日)

生まれる、とは何か。本展のタイトルはメキシコの先住民セリ族が出身地を尋ねるときに用いる慣用句だという。洞窟を思わせるブラックキューブのなかで、鑑賞者は自由に歩き回りながら世界各地で録音された多種多様なサウンドを浴び、宇宙的な光の軌道に刺し貫かれる。その体験は古代の宗教祭儀と未来のデジタルテクノロジーが融合し、時空を超えた神話を具現化するかのようだ。会場内の闇と光を縫うように会場内を歩くとき、鑑賞者は子宮内で生を受けた1個の受精卵となって胎児に成長し、この世界と出会い直す。「胞衣」とはそのように固有の生と応答する「外臓」であり、私たちの魂を包み、世界につなぎ止める皮膜であるのだろう。
「加藤泉 何者かへの道 IZUMI KATO: ROAD TO SOMEBODY」(島根県立石見美術館 7月5日~9月1日)

生きる、とは何か。最初期の作品から最新作まで、キャリア全体を総覧する圧巻の企画展。とりわけ模倣と実験を重ねた思春期の試みや閉ざされた心境が伝わる「初期」の作品が興味深い。悲痛さや迷い、苛立ちさえ伝わる混沌とした筆致の細部に、現在の仕事に連なる描画技術の萌芽や深層心理にダイブする潜在的な起爆力が滲む。独自の作風と世界観を獲得した中盤以後は、年を追って高まる爆発的な創造性に唸り、刮目させられた。さらなる傑作は、まだまだこの先に現れるのだろう。内藤廣氏による石州瓦の開放的な会場建築を活用した、おおらかでメリハリの効いた展示だった。
村上慧「住む自由」(アート/空家 二人 3月28日〜4月14日)

住む、とは何か。村上は、衣食住という人間の基本的な生活要件のなかでもとりわけ複雑な「住むこと」に光を当てた。購入した土地を登記し、草を刈り、版築技法により家を建てる。井戸を掘り、電気を引き、コンポストトイレをつくる。建売や賃貸など商品としてパッケージされた住宅空間に疑問を抱くだけでなく、現代人が自明視している建築や不動産登記のシステム全体を炙り出し、その間隙を狙って労働と遊戯の境界を超えて「勉強」する姿が痛快。「村上勉強堂」の実践は、災害や戦争によって「住む自由」が侵奪されようとする現代に、芸術を通してなされるラディカルな生存の抵抗とも言える。
























