「コレクションを中心とした特集 記録をひらく 記憶をつむぐ」(東京国立近代美術館 7月15日~10月26日)

戦後80年の節目に企画された本企画は、1930年代から70年代に生み出された戦争をめぐる表象が、時を経たことによって新たな解釈を生むことを、鑑賞者が体感できる貴重な内容だった。戦争画からプロパガンダ雑誌、広島の原爆被害者による記憶画まで網羅し、イメージがどのように戦争のリアリティをファンタジーへと変換、あるいは記録を超えるリアリティを伝えたか、学芸員の綿密なリサーチに基づいた洞察力による傑出した展覧会。日本国外のアジア諸国でも話題になっていたので、カタログが発売されていたら貴重な資料として各国の美術史家、歴史家に重宝されたのではないか。
「きもののヒミツ 友禅のうまれるところ」(京都国立近代美術館 7月19日~9月15日)

友禅と聞いて、それが何を指すのかわからない人も今日は少なくないのでは。着物であり、クラフトであり、絵画でもある友禅は、日本の伝統美の本質主義にとらわれず、明治、大正にはアール・ヌーヴォー柄やエジプト柄など、時流に沿った実験的な試みも積極的に行っていた。友禅に対する先入観を覆す好企画。日本画やファッション、デザインに興味がある観客をも惹きつける可能性がある展覧会だっただけに、タイトルが内容の厚みやひろがりを伝えきれていないのが惜しい!
「For Children. Art Stories since 1968」(Haus der Kunst Munich 7月18日〜2026年2月1日)

子供や子供関連の展覧会はえてして批評や議論の対象から外されがちだ。子供が対象のアートというと、大人目線で子供用につくられた作品を想像するが、本展で展示された作品群は、子供を対等な共同制作者として巻き込むことによって完成されたものだ。アナ・メンディエタ、荒川ナッシュ医、オラファー・エリアソン、エルネスト・ネト、トロマラマなど、物故作家から現役まで20人(組)以上、古今東西のアーティストによる作品群は、子供はもちろん、大人も十分楽しめる強度があるものばかり。1968年というコンセプチュアル・アート全盛の時期を起点に展覧会を構成し、子供のための作品を歴史化した本展の意義は大きい。
























